【たじま昔ばなし】 淀の洞門 鬼とスサノオ対決

昔むかし、人が現れるよりずっと前の話。竹野の海岸に大きな鬼が住みつき、頑丈な金棒で山のふもとを一生懸命掘っていた。どうやら、岩をくりぬき、金棒でかついで、山ごとどこかへ運ぼうとしていたようだ。

大鬼はやがて、穴を貫通することに成功する。さあ、山を持ち上げようと腰を上げた瞬間、沖の方から大きな波が押し寄せてきた。さすがの大鬼も飲み込まれ、海の底に沈んでしまった。

鬼の振る舞いがあまりに乱暴だったため、海の神が腹を立てたのだ。後には洞門だけが残った―。

やがて人々が暮らし始めた竹野の村に、都から「淀の大王」を首領とする鬼の集団がやってきて、洞門を拠点に暴れ始めた。酒や食料を奪われた村人は、それまでの穏やかな生活が壊されてしまい、ほとほと困ってしまった。

そんなうわさを聞き付け、息巻きやって来たのがスサノオ。鬼を一匹ずつ投げ飛ばし、最後には大王もやっつけた。村には再び平和が戻ったという。

竹野町切浜 (2004/09/05)

専門的には海食洞(かいしよくどう)と呼ぶそうだ。波が岩山を少しずつ砕き続けた結果、地質の弱い部分が崩れてできる穴。但馬海岸一帯で広く見られ、竹野町切浜の「淀の洞門」もその一つとされる。  けれど、自然のメカニズムが解明されたのは、つい最近のこと。これまで親から子へ、子から孫へと長く語り継がれてきたのは、鬼とスサノオの伝説だ。

洞門は高さ約十五メートル、奥行き三十―四十メートル。近付いてみると、鬼の創造物だと信じた先人の気分が実感できる。

引用:神戸新聞「但馬の説話探訪」

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