西村真悟 大韓航空機爆破テロの位置づけ
(以下転載します)
まず、昨日のことからご報告する。
来日中の大韓航空機爆破犯人の金賢姫は軽井沢の鳩山君の別荘から出て、東京上空を約40分ほど遊覧飛行をした後、帝国ホテルに入って夕方の「晩餐会」に出席した。
その時、政府認定拉致被害者以外の拉致被害者を調査している「特定失踪者調査会」の荒木和博代表が、特定失踪者の写真を詰めたバッグをもって帝国ホテルを訪れ、金賢姫においてその写真を閲覧し、そこに見覚えのある人物がいるか否か確かめる機会を与えて欲しいと中井大臣に申し入れた。
すると、中井大臣は、言を左右して荒木氏を一時間以上ドアの前で待たせたうえ、ホテル従業員が食事などを運ぶときに用いるバックヤードから、金賢姫とともにこっそり「逃げた」。
そもそも金を招いた政府の任務は、拉致被害者の情報を金から得ることである。しかしながら政府は、その情報を得る機会を荒木氏に与えなかった。と言うより、荒木から逃げた。
軽井沢や首都上空の遊覧飛行といい、これで、この度の金来日は、菅民主党政権が仕組んだ人気浮揚の軽薄なパホーマンスであることが明らかになった。
私は、荒木和博が帝国ホテルに行く1時間前に、飯田橋の特定失踪者調査会の事務所で彼と会っていた。そして、帝国ホテルでの顛末は、新幹線で新大阪に着いてから知った。
拉致被害者救出の為に、情報収集に果敢に突き進んだ特定失踪者調査会代表荒木和博、あっぱれである。
菅内閣の面々と、政府のこの度の「VIP金賢姫」接待要員は、何の為にその地位にあって歳費を受け取っているのか。
歳費なく身銭を切って長年にわたって拉致被害者を調査している
荒木和博らの爪の垢でも飲めと言いたい。
現政府の面々は、拉致被害者を救出するためにいるのではなく、拉致被害者を食い物にして人気を得ようとしている。
次に、我が国との関係で大韓航空機爆破事件を位置づけておかねばならない。そうすれば、この度の政府の対応が、如何に軽佻浮薄な本質からずれたものであるか明らかになる。
まず、骨肉が争う凄惨な朝鮮戦争は北朝鮮の金日成による武力侵攻から始まった。武力による朝鮮半島統一は、北朝鮮の悲願であり「国是」であり、今も変わっていない。
(もっとも、菅内閣と民主党のなかには、未だに朝鮮戦争は南の韓国がアメリカとともに北朝鮮に侵攻して始めた、と北朝鮮と同じことを言っている左翼がいることに注意)
1968年1月、北朝鮮の武装ゲリラの南侵が失敗する。しかし、武装ゲリラ達は、韓国大統領の官邸である青瓦台近くまで迫った。
このゲリラによる直接的な武力侵攻の失敗を受けて、北朝鮮は、対日工作活動を強化して間接的侵攻を模索する。1970年のよど号ハイジャック事件以来、北朝鮮は対日工作を強化し始めた。
その結果が、1974年8月15日の文世光事件、即ち、朴大統領狙撃事件である。また、この時期、我が国内でも、同年同月30日に三菱重工本社ビル爆破事件が起こり、日韓両国とも騒然たる状況になった。
そこで、文世光事件であるが、これこそ日本経由の南侵モデルとなったもので、日本人拉致と大韓航空機爆破はこの文世光事件から組み立てられた犯行といえる。
ゲリラの直接侵攻失敗以来、対日工作を強化した北朝鮮は、在日韓国人文世光(22歳)を北朝鮮の工作員に仕立てることに成功する。
朝鮮総連生野支部政治部長金○○は、文世光に資金をあたえ射撃訓練を施し日本人の真正なパスポートを用意する。
文世光は大阪湾に入った万景峰号の船内で、北朝鮮工作員から、8月15日の韓国の復光節の式場で韓国朴大統領を狙撃せよとの指令をうける。
文世光は、大阪府警の高津派出所から奪われたピストルを持って日本人として韓国に入国し、式典会場で朴大統領を狙撃する。しかし、弾は大統領から外れて大統領夫人に命中する。
そして、文世光は、その場で逮捕され全てを自供して犯行は北朝鮮のテロという事実が判明した。
しかし、この文世光によるテロの結果、何が起こったか。
韓国内の世論は、北朝鮮を非難するのではなく、日本を非難し反日暴動が巻き起こった。日韓の国交断絶寸前という状態になった。文世光が在日であること、日本人になりすましていたこと、日本の警察のピストルが犯行に使われたこと等の要因からであろうか、不可解であるが、韓国世論が反日の方向に激高したことは確かである。
そこで、北朝鮮は、この韓国内の現象を眺めて、日本人をテロ犯人に使えば、日韓関係を破綻させ、北朝鮮にとって南侵の絶好の条件が整うと判断した。
ここから生まれてきたのが、日本人拉致と蜂谷真一と蜂谷真由美(金賢姫)の日本人父娘による1987年11月29日の大韓航空機爆破テロである。
振り返れば、我が国政府が文世光事件の背景を徹底的に調査し捜索すれば、北朝鮮の対日工作の根っこを撲滅することができ、その後の日本人拉致や大韓航空機爆破は防げたと思われる。
我が国政府は、1974年の時点で、文世光を工作員にした朝鮮総連生野支部政治部長金何某を逮捕し、文世光が射撃訓練をした東京の朝鮮総連系病院を家宅捜査し、万景峰号を調査しさらに朝鮮総連を徹底的に調べ上げているべきであった。
しかし、時の田中内閣はそのどれもしなかった。その理由は、推測であるが、日中国交樹立を果たしたその次は、日朝国交樹立で締めたいと功名心を燃やしたからだろう。
このように、時の内閣が人気浮揚または功名心から、国益と国家に対する脅威を甘く見れば、相手はどこまでも付け入ってくるのが国際政治、特に近隣諸国である。
しかるに、この教訓を無視して、この度も政権の人気浮揚のために、金賢姫をVIP扱い有名人扱いしているが、我が国への脅威を忘れた愚かな政治の所業だと言わざるをえない。
我が国政府は、伝聞ではなく直接に彼女から、日本人になりすました動機、日本のパスポート入手の経緯、そして、大韓航空機爆破の動機、大韓航空機爆破の指令を出した人物の名前、日本人を拉致した犯人の名前と官職などは、明確に聞き取りして供述調書として確保しておく必要がある。
現政権が、それをしない理由、それをする必要性を意識しない理由は、何だろうか。そして、千葉という法務大臣が金賢姫の入国を特別措置で認めた理由は何だろうか。
それは、ひょっとすれば、現菅内閣と民主党は、北朝鮮と同様、金賢姫を爆破犯人と考えていないからではないか。こう考えれば、現内閣が彼女を奇怪なVIP待遇で囲っていることが納得できる。
北朝鮮は、朝鮮戦争を起こしたのは韓国とアメリカだと言っている。同様に、大韓航空機爆破は韓国のでっち上げと言い、韓国哨戒艦の撃沈もでっち上げと言っている。
それに合わせて我が国の社会党も大韓航空機爆破はでっち上げと言ってきた。
したがって、社会党の逃げ込み寺である民主党とその内閣も社会党と同じ考えで金賢姫を爆破犯人ではないVIPとして受け入れているのかもしれない。
特に、大物工作員であリ横田めぐみさんらの拉致犯人であるシン・ガンスの嘆願署名をした菅直人や千葉景子氏らは、北朝鮮の主張を正しいと思っているのであろう。
ともあれ、この度の、蜂谷真由美こと金賢姫氏の来日は、
国益の意識と国家観のない現民主党政権の社会党的本質をさらに明らかにするとともに、
改めて北朝鮮の日本人拉致という悪質な犯行を際立たせ、国民の救出への思いを喚起した。
これが、政府が国民に隠してVIP扱いする金賢姫来日の意義であろうか。
さらに付言しておく。
政府は、税金で金賢姫氏を広告代わりに使ったのであるから、金氏来日の全費用と「金氏に支払う報酬」つまり「出演料」の額をすべて明らかにすべきである。
この内閣は、必ず、出演料の支払いを金氏に約束して日本に来てもらっているはずだ。
◎西村真悟 克服すべき官僚支配とは何か
拉致被害者救出運動は、民間有志の運動として始まった。
全国各地の有志が、各人の場所で街頭署名を始め、横田ご夫妻を呼んで拉致問題を訴えて広がった。相互間の連絡が始まったのは、各人が立ち上がってからであった。各人は、同じことをしているから同志となったのである。
いつの間にか、皆は胸に青いリボンを着けるようになった。
その青いリボンは、北朝鮮にいる拉致被害者と家族を隔てる日本海の青を表しているとともに、いかに離れていても家族を結び付ける空の青を表していた。
拉致被害者救出運動は、国民運動となった。ついに日比谷公会堂で毎年開かれていた救出集会に、官房長官さらに総理大臣が出席するようになった。
そして、内閣に総理大臣を長とする拉致対策本部がおかれ、担当大臣も生まれた。
そこで何が起こったか。
拉致被害者救出は、大臣と官僚の胸を叩いても火花が出ないルーティーンワークとなった。
現在、拉致担当大臣がおり担当の役人がいる、そして、官制のポスターが作られ官制の運動をしている。この体制が拉致被害者救出への関心を国民から奪い、救出を遅らせる要因となった。
このことを端的に示したのが、この度の金賢姫元北朝鮮工作員の来日である。
彼女の来日の目的は大臣と官僚の演出によって、わけがわからないものとなった。
彼女は、軽井沢の鳩山氏の別荘にいて田口さんと横田さんのご家族と会った。東京上空をヘリ遊覧し、帝国ホテルで、担当大臣などと食事をして韓国に帰った。
このすべての工程を官僚が取り仕切った。誰と会い、誰と食事をするか、すべて官僚が決めた。
一体、何のために金賢姫を招いたのか。
昨日も書いたが、特定失踪者調査会の荒木和博代表は、会食の場所である帝国ホテルで一時間以上も待ったのであるが、金賢姫との接触を一切許されなかった。
この荒木代表の記者会見の様子を、本ホームページに掲載するので閲覧していただきたいが、要するに、この官僚組織は、新たな拉致被害者が判明して増えるのが嫌なのだ。
現在の「政府認定拉致被害者」だけに被害者を限定し、この他にも多数の拉致被害者が存在するという前提は認めない、これが拉致問題に関する「官僚支配」である。拉致被害者を拉致被害者と認める絶好の機会を奪う官僚組織は、国民を救出する組織ではなく憎むべき棄民のための組織である。
したがって、官僚組織は、政府認定被害者以外の被害者のリストと顔写真を持参した荒木和博が金賢姫と接触し、被害者の写真を金が見て確認する機会を奪ったのである。
民主党は、「官僚支配」の打破と言っている。
バカも休み休み言え。
一番「官僚支配」に身を委ねているのが民主党の内閣ではないか。要するに、拉致被害者は一体何人いるのかという重要課題に関心がなく、被害者を救出する意欲もない者(菅)が、官僚に頼って金賢姫を招いて形をつけた。これがこの度の金来日である。
(前衆議院議員)