【米国の新海洋戦略】1/5 単独防衛は不可能、同盟国との連携求める米国

Kojiyama/ 6月 11, 2010/ トピックス/ 0 comments

単独防衛は不可能、同盟国との連携求める米国
米国の新海洋戦略と、日本が果たす役割

JBPRESS 2010.06.10(Thu) 金田 秀昭

米国は、2007年10月、海軍、海兵隊および沿岸警備隊の首長の連名による新海洋戦略、『21世紀のシーパワーのための協調戦略』を公表した。それから約3年が経過し、具体的な形で米軍の新しい戦略が見えてきた。
その中身を検証すること、そしてどのように対応していくかは日本の防衛を考えるうえで極めて重要である。

海軍、海兵隊、沿岸警備隊、初の3組織共通戦略

新海洋戦略は、米海軍のイニシアチブにより、米国の海軍、海兵隊、沿岸警備隊が合同でまとめた『一体化海洋戦略』である。
今までにも存在したように思えるかもしれないが、実は、3つの組織が共通戦略を打ち出すのは初めてのケースである。2001年の米中枢同時テロ後の、相互の連携を重視した新しい戦略と言える。
新海洋戦略を要約すると以下のようになる。

「多様な領域における多元的なグローバル化の進展により、急速に変化する国際的な海洋安全保障環境において、米国の総力および同盟・友好国を結集した一体化シーパワーにより、海洋を紐帯とした貿易、金融、情報、法制、市民生活、政治などを包含する地球規模の相互依存ネットワークで構成される国際システムの防衛・維持を目指した戦略」

軍事的には、米海軍が2002年に発表した『21世紀の海軍力』を敷衍する形で、重要な地点での前方展開戦略、抑止力の維持、同盟強化など、戦争領域でのハードパワーの維持を主張している。ここには大きな変化はない。

大きな違いは、2005年に発表した『千隻海軍構想』を言い換えた形の『地球規模海洋協力構想』に基づき、海賊取り締まりや国際的な災害発生時の人道支援などでの、同盟国や友好国などとの協力強化による非戦争領域でのソフトパワーの重視が打ち出された点だ。

新海洋戦略では、『地球規模海洋協力構想』についての明確な定義はなされていない。しかし文中には、同構想が他国との協力により敵対勢力(非国家集団を含む)に対して強いメッセージを送ることができる非公式の協定であることが、まず最初に述べられている。

そして、海賊やテロ、武器の拡散といった不法行動に対する非戦争領域における法の支配を推進するための『海洋安全保障』での多国間協調アプローチであること、同構想を推進することにより、協調的な海洋安全保障を支援するための国際的な相互運用性を向上させる触媒として作用し得ることが述べられている。
米軍だけでは世界の海をもう守れない

冷戦時の米軍戦略は、21年前の米海軍の『海洋戦略』に代表されるように、旧ソ連との対決を念頭に置き、米国が中心となって「冷戦での勝利」に集中するものであった。
一方、新海洋戦略では、平素からの同盟国や友好国などとの『地球規模海洋協力構想』の構築の重要性を強調している。
これには、旧ソ連崩壊後、米軍は世界で唯一の超大国となっものの、台頭する無法国家や国際テロとの闘い、多元的なグローバリゼーションの進展に伴う紛争形態の多様化などを踏まえれば、「世界の海全体の安全を1カ国だけで確保できる国はない」との認識がある。

そのうえで、米軍は必要な時には対処し得る能力は維持するとしつつも、「各国との信頼や協力は急にできるものではない」として、むしろ、平素からの同盟国や友好国などとの関係強化を訴えているのである。

金田 秀昭
Hideaki Kaneda
1945年、神奈川県生まれ。68年防衛大学校卒。同年海上自衛隊に入隊、海幕防衛課長、統幕第5幕僚室長(政策担当)、護衛艦隊司令官などを歴任、99年退官(海将)。ハーバード大学上席特別研究員、慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授などを歴任。現在、NPO法人岡崎研究所理事、(財)平和・安全保障研究所理事、(財)日本国際問題研究所客員研究員などを兼任。
主な著作は、『弾道ミサイル防衛入門』(かや書房)、『目覚めよ、そして立て、海洋国家日本』(内外ニュース社)、『マハニズムによる国力伸張を目指す中国の国家海洋戦略』(安全保障懇話会)、『日本のミサイル防衛』(日本国際問題研究所:共著)、『武力戦の様相』(内外出版:共著)、『BMDがわかる』(イカロス出版)など

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