菅直人政権と中国の戦略的な期待

/ 6月 6, 2010/ オピニオン/ 0 comments


1/3【頑張れ日本】温家宝来日に抗議する国民集会[桜H22/6/5] SakuraSoTV


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3/3【頑張れ日本】温家宝来日に抗議する国民集会[桜H22/6/5] SakuraSoTV

4月に沖縄近海を南下した中国艦隊が沖ノ鳥島の周りを航行したり、艦載ヘリが護衛艦に接近したりするなど、日本の安全保障に重大な脅威を及ぼし、また、台湾、チベット、ウイグル等周辺国への恫喝や弾圧も止める気配のない中国に対し、温家宝首相の来日に合わせて抗議の声を上げた「頑張れ日本!温家宝首相来日 中国の不当威嚇攻撃・人権侵害に抗議する国民集会」(5月28日)の模様をお送りします。

パネリスト:
イリハム・マハムティ(日本ウイグル協会会長・世界ウイグル会議日本全権代表)
川村純彦(川村研究所代表・岡崎研究所副理事長・元海将補)
永山英樹(台湾研究フォーラム会長・日本李登輝友の会理事 放送法改正推進本部長)
平松茂雄(軍事評論家・元防衛研究所研究室長)
ペマ・ギャルポ(桐蔭横浜大学教授)
鳴霞(月刊「中国」編集長)
コーディネーター:水島総(「頑張れ日本全国行動委員会」幹事長)

◆チャンネル桜公式HP
http://www.ch-sakura.jp/

続きは
「台湾は日本の生命線!」永山英樹(台湾研究フォーラム)
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-1188.html

■中国が菅氏に寄せる最大の期待に「台湾独立反対」

六月二日に鳩山由紀夫首相が辞意表明した後、さっそく台湾などの漢語メディアも次期首相候補として菅直人氏を紹介し始めた。

台湾の有線テレビ局TVBSも二日夜、「次の首相として最も呼び声が高いのは菅直人副首相」と伝えているが、そこではこう報じている。

―――菅直人の政治的立場は長期的に親中だ。中国の政治ウォッチャーは「非常に友好的。本人自身、東京工業大学での講演で、『台湾独立に反対する』と公に表明した。就任後、日本は引き続き北京に接近するだけだろう」と見ている。

この報道は台湾国内のみならず、中国のメディア各社によっても引用され、「菅直人は公開の場で台湾独立反対を表明」と、期待を込めて強調されているが、この一点こそが中国には最大の関心事と言えるのだ。

なぜなのか。それを理解するには中国の国家戦略を知らなければならない。

■日本列島に戦略的異変をもたらす民主党政権

日本列島、台湾と連なる第一列島線は戦後一貫して、米国にとっては大陸共産勢力の太平洋進出に対する重要な防波堤である。逆に中国から見ればそれは勢力伸張の障害であるばかりか、自国を包囲する米国の封鎖線であって、何としてでも突破しなければならない要衝なのだ。

そして中国軍事力の成長が著しい今日においては、すでに東アジア・西太平洋地域での覇権を巡ってせめぎ合う米中の外交、軍事戦略の最前線と化しつつあることは、先ごろの中国の東海艦隊による第一列島線越えの恫喝デモンストレーションが教えた通りである。

ところがその日本列島において昨年、大きな変化が生じた。つまり上記報道の言うところの「北京に接近」である。

民主党政権が発足し、「アジア重視」「東アジア共同体構想」「普天間基地の県外、国外移設」を打ち出したことは、日本が米国陣営内から中国勢力下へと徐々に軸足を移し始めたことを意味したのだ。

■安全保障の危機―中国の磁力に抗わない菅氏を危惧

だから約百四十名もの民主党議員が一斉に北京で胡錦濤詣を行っただけで、米国は狼狽したのだ。来日した習近平副主席をあたかも「中華王朝の皇太子」の如くに歓待し、そのためには皇室の政治利用をも厭わなかったのは、すでに同党政権には中国への属国意識が根付いている証だった。

民主党政権はそうした状況を有権者の前で否定するため、「日米同盟が基軸だ」と強調するが、それは中国の磁力に引き寄せられながらの釈明にすぎないのだ。

問題は今後、同政権が自国の安全保障のため、中国の磁力に抵抗できるかだが、ここでまずネックとなるのが菅直人氏の台湾問題に対する姿勢である。

もし中国が期待するように首相として「台湾独立に反対する」を表明すれば、あるいはその姿勢を何らかの形で政策に反映させれば、いったい日本はどうなるのだろうか。

■中国の台湾問題巡る日米同盟への圧力とは

中国が建国以来の六十年間にわたり、国際社会に対して一日も欠かさず「台湾は中国の一部」と虚構宣伝を展開してきたのは、台湾併呑と言う対外侵略を正当化するためである。ことに日米安保条約に基づいて台湾を防衛する米国と日本に対し、この宣伝を受け入れさせることはあの国最大の外交的課題であり続けているのだ。

そこで日米に対しては「台湾独立に反対する」と表明せよとの要求圧力を繰り返し加えてきた。しかし日米側はそれに抵抗してきた。国際法上、そして東アジア防衛の戦略上、「反対」表明などできないのである。なぜなら台湾は中国の領土ではないからだ。

もし「台湾独立に反対する」と表明してしまえば、台湾が中国から独立を目指す中国国内の一省と承認するに等しくなり、そこを防衛することは中国内部の反乱団体への支援と言う不法行為だと認めることになってしまうのだ。

ただ台湾ミサイル危機を通じ、軍事力の近代化を背景とした中国の台湾侵略の決意の固さを思い知らされた九〇年代後半以降、日米は中国の宣伝攻勢に妥協を見せ始めた。

米国ではクリントン政権以降、そして日本では橋本政権以降、「台湾独立を支持しない」と表明し始め、そのまま今日に至っているのである。

これは「台湾独立を応援もしないが反対もしない」との意味だが、「支持しない」は「反対する」に聞こえるため、こうすることで中国を満足させている。だがこれでは中国の軍事行動を抑止できないばかりか、かえって助長するばかりである。

■「台湾独立反対」を日本に求める中国の執念

そして増長する一方の中国は、その後台湾で独立志向とされる民進党政権が発足するや、日米に対して「独立反対」表明を行わせ、台湾側の意志を挫くとの外交戦略に出た。そうした圧力の結果、ブッシュ大統領は口頭でそれに応じたと伝えられている。

日本に対しても〇七年四月に来日した温家宝首相が、安倍晋三首相に文書での「反対」表明を執拗に迫った。しかし安倍氏は口頭で「支持しない」と述べるだけに止めた。

同年十二月に訪中した福田康夫首相も温家宝氏との首脳会談で「反対」表明を要求した模様だが、これにも失敗している。そこで会談直後の共同記者会見で温家宝首相は、「我が方は台湾独立に反対する日本政府の立場を評価する」と語り、福田氏が「反対」表明をしたと思わせるでっち上げ宣伝を平然と行った。

総統選挙を間近に控える民進党政権に打撃を加えたいとの一心だったのだろう。もちろん中国に従順な福田氏からは抗議はないと踏んでのものだった。

■菅氏を「非常に友好的」と喜ぶ中国の戦略思考

そしてここまで日本が侮られる中、次期首相と目される菅氏は、すでに「台湾独立に反対する」と表明していると言うのだ。

政権維持のためにも台湾併呑を国家目標に掲げる中国。だからこうした台湾問題への姿勢一つだけで、中国側が「非常に友好的」と期待を寄せるのは当然なのである。

もし菅直人政権が「台湾独立に反対する」を改めて表明すれば、日本は台湾有事の際に日米同盟に背き、米軍への後方支援を見合わせるとの誓約と受け止められることだろう。

そしてもし台湾が中国に併呑され、しかも日米同盟が解消されれば、それだけで中国支配下の「東アジア共同体」が形成され、日本はその朝貢国として生きるしかない。

ところが民主党政権は敢えてその道を選ぼうとしているのではないかと、中国は期待し、米国は危惧しているのだ。

そしてそうした戦略的予測を立てる能力がないのが、日本の圧倒的多数の有権者なのである。だから民主党政権を選んだ。そして菅氏への「呼び声が高い」。

■かつては中国恐れぬ台湾の味方だった菅氏だが

ところが、菅氏は中国を恐れない台湾支持者だとの見方も一方ではある。

米国の漢語メディア、世界新聞網は二日、次のように報じている。

―――菅直人は台湾に非常に友好的だ。かつて公開の場で台湾の国連加盟を支持するとともに、両岸問題は平和的に解決されるべきで、国連で討議されるのが最も好ましいと語っていた。

事実、菅直人氏は〇二年五月、何と民主党と上海国際問題研究所が中国で開催したシンポジウムで「中国が反対姿勢をとっていることは承知している」としながらも、敢えてそのように主張しているのである。

中国の逆鱗に触れることも恐れずここまで言える議員は、今日どれほどいるのだろうか。

実は小沢一郎幹事長、岡田克也外相なども、かつてはそうした台湾支持の姿勢を見せたとがあった。そのため同国内で彼らは、中国を恐れぬ勇敢な日本の政治家だとして尊敬を集めたものだが、それだけに罪深いと言うか、情けない。

今では「台湾は中国の一部ではない」との真実を口にすることなどできまい。

このように中国の勢力下に陥ると言うことは、真実、良心より、あの国の政治宣伝を優先させなければならないと言うことなのだ。まるで中共統治下に生きる中国人民の如くに。

■このままでは日本は中国の勢力下から足を抜けない

民主党代表戦への出馬表明を行った菅直人氏は三日の記者会見で、「日本外交の基軸が日米関係にある大原則はその通りだ。米国との信頼関係をしっかり維持しながら、アジアの中で最も日本との関連も深い中国との関係も同様に重要視して行く」と語った。

この内容の危険さを、いったいどれほどの国民が気付いたことか。

日本列島の上において米中勢力が拮抗し始めている中、中国との関係を米国との同盟関係と「同様に重要視」すると言っているのだ。

これに関してたとえ話をしよう。極端なたとえのようだが、決して間違ったものではない。

今ある社会の治安を守る警察官と、それを乱そうとする暴力団の双方を「同様に重要視」しようとする市民は社会の敵だが、それが菅直人氏ではないのか。

「日本は引き続き北京に接近するだけ」と言うのもそのことだ。「暴力団」に「接近」すればするほど、その影響下から足を抜くのが困難になることは誰もが知っている。

そしてその菅氏が本四日、国会で首相に指名された。間もなく発足する新政権もまた、中国の対日、対アジア戦略に呼応する傀儡となることだろう。そこに中国の強化される一方の磁力が存在する限り、そうならざるを得ないのだ。

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