さらば政治屋

/ 12月 16, 2009/ オピニオン/ 0 comments

時代 中島みゆき

地方発「さらば自民党」
日経BP 2009年12月16日
 歴史的な大敗で下野したが、抜本的な改革の姿は見えない。来年夏の参院選に向けた公募制は広がらず、世襲も容認。業界団体も民主党に侵食され、地盤沈下が止まらない。
 「もう中央に頼っていてはダメだ。自民党は革命的な変革をしないと勝てないのに(党本部は)分かっていない」
 戦国武将、武田信玄の像がにらみを利かせるJR甲府駅前広場にほど近い自民党山梨県支部連合会。幹事長の皆川巖・県会議員は、来年7月の参議院選挙の県選挙区候補者を選ぶ公募が最終段階に来た12月5日、胸の内をぶちまけた。
 総選挙で歴史的な敗北を喫し、下野して3カ月余り。谷垣禎一・元財務相が新総裁に就任してからでも2カ月半が経つというのに、抜本的な改革はほとんど見られない。
 山梨県では前回の参院選(2007年)と今回の総選挙で大敗、自民党の国会議員がゼロになったが、こうした地域を中心に、地方の苛立ちはピークに達している。国会議員からも、「党の綱領を見直し、参院選もすべての選挙区で候補を公募するぐらい(の改革を)やったうえで選挙に臨まないと自民党はなくなる」(舛添要一・前厚生労働相)といった厳しい声が噴出。党内には不満のマグマがたまっている。

 自民党は、小泉純一郎元首相一人の人気でかろうじて存続できた。自民党をぶっ壊すといって小泉政権は逆に戦後3番目の長期政権であった。しかし、その後首相は1年ごとに交替し、ついに賞味期限がつきたのである。
 このタイトル「さらば自民党」は、きっぱりと言い切ったといえるが本質をついているのは間違いない。国民の多くが民主党を選んだのではなく、自民党への失望と制裁であることを党の中心に近い人間が心から分かっていないのであろう。
 偽証献金問題、外国人参政権、日米安保をおびやかす普天間基地移転問題の混迷、経済対策や財政と予算の遅れ、天皇と中国主賓との強引な会見など、鳩山連立政権はツッコミ所満載であるにも関わらず、一枚岩となって攻め切れていない。敵が弱っていても戦えないほどの脆弱ぶりである。
 舛添要一氏も参政権賛成派であることがひっかかるが、若手・中堅議員や落選議員ほど苛立ちは当然ある。充分な総括をせずに「みんなでやろうぜ」とかけ声だけでは、古株と少人数で御輿は担げ上げられない。
 まず、中選挙区制では自民党派閥の異なる候補者の複数当選が可能だった。それが良い点としては複数の総裁候補を党内で戦わせることができたからだ。悪い点は万年与党として国民から離れた党内の争いになってしまった。小選挙区制導入が転機となった。1人区となれば政党選挙になり個人個人の能力以上に他党との政策争いになる。小泉元首相以降、自民党にカリスマ性のあるリーダーがいないことに尽きる。小泉チルドレンといわれる若手新人議員が増えたが、個人的な名前が浮かんでこないほど次のリーダーとしての中堅クラスが育たなかった。
 アメリカは共和党のブッシュ政権による新自由主義的政策と呼ばれた自由貿易(グローバル資本主義)推進も、サブプライムローンに端を発した金融危機で上回る戦後最悪の不支持率を記録した。
 2008年11月4日、アメリカ大統領選挙で勝利した名演説の民主党のオバマでさえも、最近は支持率が下がり続けている。直接関係ないが、10月の世界恐慌で未曾有の大不況に突入しフーバーから大東亜戦争時のアメリカ大統領に就任したフランクリン・ルーズベルト、トルーマンは民主党だった。
 小動物でさえ身の危険を感じたら本能的にとっさに行動する。幕末に国が危ないと、藩も幕府もなく行動したのが地方の下級武士だった。自民党を建て直すような中途半端な意識ではなく、国を土台から造り直すために解党して保守新党を立ち上げるか、国民に分かる政治を見せないといけない。本当はそれを国民は待ち望んでいることなのである。
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