鳩山・オバマ初の首脳会談

/ 9月 24, 2009/ オピニオン/ 0 comments

 オバマ大統領は、国連総会で初めて一般討論演説を行い、テロや地球温暖化など多様な国際問題の解決は、「米国だけの努力では不可能」と率直に認め、世界はあらゆる国々の努力が必要な「新しい関与の時代」に入ったと宣言した。

 「国連重視」を打ち出す一方で、他の全加盟国にも相応の行動を促したものだ。

 大統領は、「米国の単独行動を非難してきた国々は、もはや米国が問題解決するのを待っていることはできない」と述べ、「地球規模の問題に地球規模の答えを出すため、すべての国々が自らの責任を果たす時だ」と呼びかけた。

 具体的に取り組むべき優先課題として「核不拡散と核軍縮」を挙げ、北朝鮮とイランに対し「あくまで核兵器保有に固執するなら責任を取らせる」と名指しで警告した。さらに、テロ対策や中東和平など「平和の追求」、気候変動などからの「地球の保護」、それに「すべての人に機会がある世界経済」の実現も優先課題とし、これらを合わせた「4本柱」に各国と一致して取り組む決意を表明した。

(2009年9月23日23時40分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090923-OYT1T00937.htm?from=top
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090924-OYT1T00142.htm

いま、米国はベトナム戦争で国の経済力が衰退し反戦運動が起きたように、イラク・アフガン戦争の膨大な戦費とリーマンショックで疲弊している国難の次期にオバマ大統領が就任した。世界の覇権国家として君臨してきた実質的なパワーはなくなっている。

ビートルズの「オール・ユー・ニーディーズ・ラブ(愛こそすべて)」やジョン・レノンの「イマジン」「ラブ」が流行ったころ、ジョーン・バエズやフォークソングは、ベトナム反戦歌や政治を歌にして表現した走りではなかったか。そこに共通するのは、「愛」であり、「世界に国境がなければいいのに・・・」など、それは「世界はひとつ」という理想(ユートピア)だった。

もちろんそのころ中高校生だった自分も、フォークブームでギターがはやり、それに共鳴して歌ったひとりだ。日本でもフォークソングブームになり、岡林信康、赤い鳥、吉田拓郎など、そしてかぐや姫など内面に向かった私情的な歌がはやった。オバマ大統領は48歳だ。ビートルズ解散のころはまだ小学生だったからそうしたブームの後だろう。

演説はその苦悩を表しており、具体的に取り組むべき優先課題として「4本柱」として「核不拡散と核軍縮」「平和の追求」「地球の保護」「グローバル経済(すべての人に機会がある世界経済)」を揚げた。とくにブッシュ大統領と異なり国連無視から協調をうたったことが大きな変化だ。

核軍縮・非核化

核軍縮・非核化では、核軍縮と北朝鮮とイランに対して相応の責任を取らせるとした。世界は、国際法が空約束ではなく、条約の規定は執行されるものであることを示さなければならないと述べた。

ロシアとの削減条約が実現したのも、東欧のMD構想中止が評価されたことも、実情は軍事費削減という米国の台所事情にある。しかし、リビアのカダフィ氏が初めて出席しその演説で、国連安保理事会の拒否権発動は国連の一方的な制裁であると国連のあり方を問うたことで、新たな国連の定義を示すものとして注目できる。

国際法を持ち出している点では、大戦ではサンフランシスコ講和条約で軍事裁判判決の無効と戦争責任は問わないとして決着しているが、米国が戦後すぐに連合国としながら実際は単独で「東京裁判」などの国際法に準じない軍事裁判をおこなったGHQについても、日本としては追求しどころがある。

グローバル経済

世界は、(1929年の)大恐慌以来最悪の経済危機からの回復の途上にある。需要再拡大の方策をとり、強欲、過剰な振る舞いに終止符を打つための金融部門の規制強化を話し合って、今回のような危機再発を防止するとした。

そう、1929年の世界大恐慌のとき保護政策をとった共和党フーバー大統領から、民主党から選ばれたフランクリン・ルーズベルト大統領になった。経済対策としておこなったニューディール政策をもってしても失業者は急激に減少せず失業率は高いままで推移し、雇用も実質GNPも目立った変化は見られなかった。黄色人種差別で日系移民排除政策と日本への輸入品高関税・石油輸出禁止というブロック経済とよばれる保護主義政策も、いま民主党オバマ大統領が行っている国の規制強化と似ている。共和党の参戦反対を押し切って真珠湾攻撃を口実に日本に報復戦争として太平洋戦争突入となったのである。原爆開発をすすめた。そしてアメリカ経済は軍需景気で回復したのだ。

地球環境

米国はエネルギー分野革新のため投資を進める。温室効果ガス排出を大幅に削減し、2020、50両年における目標を達成する。急速に排出を増やしている新興諸国も排出削減に努めるべきだと述べた。

最大の排出国の米国がようやく、目標達成を表明したことは評価されるが、グリーン・ニューディールをかかげエコ分野に経済活路を求めている。また、排出権が原油・株にかわる新たな投資ビジネスになるというねらいがあるといわれている。

日米首脳会談では日米同盟の強化確認し、北朝鮮の核問題や核軍縮、気候変動問題への対応での連携をした。鳩山首相は会談後、記者団に「大統領と私との間で、何らかの信頼関係のきずなが出来た」と語った。大統領は「きょうから長い付き合いになるので、一つ一つ解決していこう」と述べたが、今年11月に訪日では、経済だけの肩肺外交でやってこられた日本に、今後普天間基地問題や自衛隊の海外派遣などについて、首相は農業支援や職業訓練など、我々が得意とする分野で協力として述べているが、それは日本の事情だ。自国の都合は通用しないということだ。外交防衛は一対だ。鳩山首相は米国の戦略をどこまで理解できているのだろうか。

ジョンレノンが歌ったような世界が国境のない平和なユートピアが実現できれば素晴らしい。しかし、首相や民主党が唱えるアジア共同体や国連主義は、すぐお隣で米国とEUを合わせた経済力を凌ぐまでに成長したアジア(中国・インド、そして日本・韓国など)が政治イデオロギーが一致しておらず、バブルが崩壊した日本・韓国同様に中国・インドも早くも黄色信号が点滅しはじめている。

アジアやロシアが国境のない平和な世界になっていない現状で、世界有数の核保有国として軍事巨大化する中国、核保有国のインド、パキスタン、イラン、北朝鮮に近い日本。米軍頼りの安全保障を減らしたいとする民主党と基地縮小をねらう米国の事情が図らずとも一致しないとは限らない。日本のことは日本で守ってほしいという事になる可能性がある。その覚悟と備えを充分理解してユートピアだけでは外交・安全保障は実現できないことを現実的に具体的に検討しなければなるまい。

オバマは演説が上手い。人の心を惹きつけ感動させる。しかも内容は実に分かりやすく、具体案を優先順位で明確に述べている。もちろん有能な側近が作った原稿に基づいていることは明らかだ。芝居の元もこうした人前で話すところから進化したのかも知れない。音楽でも小説や芸術でも建築でも、理屈で接する前に心で感動する。そして、なぜそれらは素晴らしいのかを後から分析する。歴史に残る偉大な政治家は間違いなく演説が上手く名言を残している。

少なくとも国のトップに立つには、雄弁で感動的な演説と正しい歴史認識は持たねば国際政治は判断を誤りかねない。日本の戦後生まれの政治家に欠落している致命的な問題だ。個人的には先祖の墓参りや近所の神社に参拝している首相は、公人として靖国神社に参拝しないのは亡くなられた英霊に礼を拝することよりも、たとえ間違った解釈でもその中韓に対する配慮が優先することがおかしいと思わない。宗教解釈や法律の理屈だけで先祖の墓参や神社参拝を考えるのがそもそも問題である。いま国連で演説できるのも、そうした日本のために亡くなられた多大なる先人のお陰なのだから。個人的にはどんな価値観を持っても自由である。しかし、首相であれば国民に代表して範を示さねばならないことを忘れないでほしい。

国の首長として国家構想を明確にわかるように説明し主導することが最大の職務だろう。鳩山首相の国連演説は、これまでの読んでいるだけの首相よりは素晴らしいが、原稿を読んでいることに変わりがないし、主旨と具体策のない抽象的な会見だ。米国はもとより日本国民は判断が困惑するのだ。命がけで戦後の独立を回復した吉田茂と比べると可哀想だが、したたかさ・たくましさが外交・防衛には課せられる。
鳩は平和の象徴とされるが、何でも食べる貪欲さ・生命力のたくましい鳥だ。

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