【中国ナウ】3/7 現代中国が抱える明暗

軍事、経済が急膨張する中国、その弱点は?
共産党政権の矛盾が表面化する危険性も

JBPRESS 2010.06.16(Wed) 茅原 郁生

(1)経済発展でもてはやされる中国

急成長する中国経済は、世界のエンジンと言われるように力強い発展を現に遂げている。今春の全国人民代表大会(全人代)において温家宝総理は、「政府活動報告」で2009年に中国経済がV字型回復したことを誇っている。

実際、2009年の第4四半期では10.7%ものGDP成長を見せており、通年でも8.7%の経済成長となって、世界経済の牽引車的役割を果たしている。
また中国経済は2009年にはGDPで世界第2位の日本に迫っており、世界貿易量でもEUに次ぐ第2位となって米国を抜いている。GDPでは今年中にも、日本を抜いて世界第2位になるのは確実だ。
そして貯め込んだ外貨準備高は2.3兆ドルと世界1位に突出しており、8000億ドルもの米国債を購入して筆頭対米債権国となっている。
このような中国経済の隆盛は改革開放政策の成果であり、情報機器や家電製品の例ではノート型でパソコン86%、携帯電話で57%、ルームエアコンで64%、洗濯機で43%などと世界のシェアを占めているように世界の工場と言われてきた。

実際、米国産業の中核である自動車工業でも2009年には1379万台を生産して世界一になり、新車販売台数も1364万台と米国の1043万台を抜いている。さらに造船量も2009年で4000万トンを超えて近い将来韓国を抜くと予想されており、まさに米中G2時代と言われる所以である。

2015年には早くもGDPで米国に迫る

今春の全人代の「政府活動報告」では、2010年のGDP成長目標を8%と掲げ、900万人の雇用を創出し、失業率を4.9%以下に抑え、物価上昇も3%以下にすることが謳われている。
このような輝かしい経済発展の成果の上に、2015年には米国のGDPが世界GDPの18.4%を占めるのに対して中国は17.0%と米国に迫る、との見方もあるほどである。このような中国は急台頭することで、自信を持って国際秩序に強引に介入してくることが多くなろう。

その経済成果を受けて、中国軍事力の強化も進んでいる。昨秋の建国60周年記念行事の軍観閲式では、国防近代化の成果が遺憾なく披露されていた。
現に1.1万人の地上行進では152種の国産新兵器を出場させ、無人偵察機や宇宙通信システムなど情報戦を中心とする新しい段階に突入した国防近代化の成果が注目された。
そこでは米本土を射程内に収めるよう1万キロメートルに射程を延伸した大陸間弾道ミサイル東風31A号が大型車載で初出現し、陸軍装備では99式戦車、野戦用防空ミサイル等が目を引き、海軍では米空母を狙う新型巡航ミサイルや「海紅旗」対艦ミサイルが車載で出現し注目された。

また空中パレードでは、総勢150機で新国産戦闘機や早期警戒管制機が初出場して関心を集めた。
このような軍事力の強化は、党軍として共産党統治体制を支えて、その正統性をバックアップする力となろう。そして国防近代化の進展は経済発展の成果であり、2009年までは前年比で2ケタの国防費の増額が続けられた努力の結実でもある。

さらに空母保有論が出ており、中国軍事科学院の戴旭空軍上校(大佐)によれば「空母は軍事的政治的プレゼンスを示し、外洋海軍には不可欠である。空母艦隊のエアカバーは航空機やミサイルでは代替できない、軍事力の核心的な地位を占める」と強調している。

そして人民解放軍がアジアで圧倒的な軍事力にまで強化されることで、その自信から関係国を威圧するなど国際秩序に挑戦してくることも懸念され、現に中国脅威論はたびたび浮上している。

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【中国ナウ】2/7 中国が抱える国家の特殊性と情勢認識

軍事、経済が急膨張する中国、その弱点は?
共産党政権の矛盾が表面化する危険性も

JBPRESS 2010.06.16(Wed) 茅原 郁生

中国という国家は、広大な国土(960万平方キロメートル、我が国の26倍)、膨大な人口(13億人)、長大な歴史という3つの巨大性を抱えている。さらに国家の中身は社会主義を標榜し、経済は発展途上段階にとどまり、国民社会には人治などの伝統的体質が残る、などの多様な内実が複雑に絡んでいる。

世界の21%の人口を7%の耕地で扶養する

そして世界の人口の21%を世界の耕地の7%で扶養するという厳しい条件下で、巨大規模の国家を共産党によって中央集権的に統治するという無理な国家体制にある。
近年、共産党政権は独裁統治に対してその正統性が問われ、同時に経済格差の拡大などの矛盾が鬱積する中で執政(政策)の正当性も問われるという、二重の課題に直面している。
さらに生産部門では社会主義的公平さを捨て、市場経済を導入して自由競争による経済運営の果実として経済高度成長を得ながら、配分の不公正や不公平などによる貧富の格差など社会的な矛盾が拡大している。
国民の不満や不安が充満する中で中国の国家目標と戦略は、経済的な発展向上を目指す積極面と、社会不満などの沈静抑制などの消極的な両面を満たすことが求められてくる。
振り返って、中国が近代的な国民国家の体裁を整えたのは共産中国の成立以降であり、まず共産党政権の生い立ちや革命の経緯などを整理して中国という国家の特殊性について整理しておこう。
中国は近代史の幕開けにおいて、アヘン戦争における敗北から列強の蚕食によって半植民地状態にされた、屈辱の歴史体験を有している。
そこから中国は国家として強くまとまっていなければまたやられるとの認識を強く抱くようになり、力の信奉者的な安全保障観と国家観を持つことになる。中国の歴史を概観すれば、異民族支配も含めた歴代王朝が興亡を反復してきた。
1911年には辛亥革命で満州族の清王朝を倒して中華の復興を遂げた。しかし孫文の「三民主義」による国家統一が未完のまま国民党と共産党とが1927年からの長い国共内戦を続け、1949年に共産政権が軍事革命に勝利することで今日の中国は成立した。
これは「政権は銃口から生まれる」(毛沢東)と言われるように革命の勝利によるもので、今日の共産党独裁政権の正統性の根拠となっている。

多くの矛盾を露呈し始めた中央集権的な国家統治

また共産党革命の成功は、中国では単なる階級政党の政権奪取に加えて、(1)清朝を倒した中華復興の辛亥革命の完結という意義もあり、(2)共産党の農村革命では地主を倒して農民を解放するなど土地制度が絡む中国の封建制の打破でもあり、(3)外国植民地の一掃(香港、マカオはそれぞれ1997年、1999年までかかったが)など、多面にわたる中国の近代国家化でもあった。その分だけ、共産党統治の正統性はこれまで広範な国民に受け入れられてきた。
しかし巨大国家の中央集権的な統治には多くの矛盾が露呈し始め、共産党を政治権力の頂点に据える指令的な統治は国民の要求や不満を吸収し、調整する面で不備が続発しており、正統性への疑念が浮上している。
加えて毛沢東時代には、禁欲的な計画経済体制によって経済面の停滞を招いたものの、配分の公平性は維持されていた。しかし鄧小平時代になって、国民に経済発展の恩恵をもたらさなければ共産党執政の正当性は支持されないとして、改革開放政策が導入された。
その結果、改革開放政策による経済発展は成功し、それは市場経済にまで行き着いた。しかし結果として改革開放政策は経済格差を拡大させ、付随する汚職腐敗など他の諸問題を鬱積させ、共産党執政の正当性への疑問と不信につながってきた。
さらに経済分野では、改革開放政策により経済体制が自由競争を原理とする市場経済にまで発展する中で独裁政治体制は依然として堅持されることで、その間の軋轢が問題となってきた。
確かに改革開放政策は中国に経済発展をもたらし、その成果として本年で中国の国内総生産(GDP)は日本を抜く勢いにある。
しかし今日、市場経済化の負の成果として経済所得格差が拡大し、それも沿海開放地域と内陸農村部との地域格差から、内陸部においても都市部と農村との格差、上海などの大都市においても職業や業種による格差などのように重層的に経済格差が拡大し、地域的にも全土に拡散した。
ここで共産党統治は、新たに執政党の政策の正当性が問われるようになった。
このような国内不安が増える中で、国民の目を外にそらす常套手段として中国は、日本との歴史問題や台湾統合など対外的な緊張事態を起こさせ、また国際秩序に挑戦するような強面外交を展開してくる可能性があり国際的な緊張は増えていこう。

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【中国ナウ】1/7 軍事、経済が急膨張する中国、その弱点は?

日本と中国。隣り合いながら国体の異なる二つの国は、この半世紀の間にどのように変遷を遂げてきたのだろうか。脅威論と嫌悪感をいだくだけではなく、日本にとってその生産拠点としても、また13億人という人口に対する市場経済として無視できない。

軍事、経済が急膨張する中国、その弱点は?
共産党政権の矛盾が表面化する危険性も

JBPRESS 2010.06.16(Wed) 茅原 郁生

中国は経済の高度成長により急台頭しており、2008年から始まった世界的な金融危機にあってもいち早くV字型回復を遂げ注目されている。現に2009年のGDP成長率は8.9%に上り、改革開放政策30年の成果を見せつけた。

世界で台頭する中国脅威論

 中国は世界の工場と言われる時代を経て、今日、世界経済の牽引車役を担い、米中G2時代ともてはやされている。
 そこで、台頭する中国はやがて世界に覇を唱えるのではないか、と中国脅威論が浮上している。しかし同時に、中国には共産党統治が安定的に続くのか、政権の正統性や執政の正当性についても問われ始めている。

 今日の中国は、社会主義の旗印を捨て切れない政治体制と、自由競争を原理とする市場経済が同居するという特殊性を抱えている。
 さらに中国は経済成果の多くを国際交易に依存しており、その分だけ国際的な協調が求められてくるが、同時に大国としての威信にもこだわって軍事力の強化を急いでおり、それが国際社会から警戒されるというジレンマの中にある。

 特に、故・毛沢東国家主席が口癖にしていた「政権は銃口から生まれる」が浸透している中国では、軍事力を重視しており、「党の柱石」として今日でも共産党統治を支えている。

強大な軍事力を中国はどのように使うのか

 これらから軍事力の強化を急ぐ中国は、今後世界に対してどのように振る舞ってくるのか、国内体制の安定と軍事力の強化動向が絡んだ対外戦略の展開が注目される。本稿では中国がどのような国家目標を掲げ、軍事力強化の基盤となる富国強兵戦略をどう展開しているか、を問題意識としてまとめたい。
 その際、今日、共産党統治の正統性と執政の共産政権の正当性が問われる中で、軍事力建設や対外戦略の基盤となる経済政策と国内政治の安定問題に焦点を当て、中国が抱える基本的な問題を中心にまとめたい。

 そこで本稿の構成は、まず中国という国家の成り立ちの特性などの基礎的な背景を整理し、次いで経済成長著しい中国の現状を光と陰の両面から探る。そして中国が掲げる国家目標の実態を整理し、現に進めている国家戦略の実態について国内問題を中心に検討する。

1.中国が抱える国家の特殊性と情勢認識
 世界の21%の人口を7%の耕地で扶養する
 多くの矛盾を露呈し始めた中央集権的な国家統治

2.現代中国が抱える明暗
 (1)経済発展でもてはやされる中国
 2015年には早くもGDPで米国に迫る
 (2)経済発展の陰とも言うべき負の側面と矛盾の深淵
 世界の資源を食い尽くす勢い

3.中国が掲げる国家目標と戦略
 大国と途上国の立場を巧みに使い分ける中国
 天安門事件が再発する危険性も十分にある

4.中国における統治能力の強化と「党の柱石」の意義・・・党軍関係
 資本家も共産党員になれる“不思議”

おわりに
 ゆとりと調和ある社会を目指すが限界も見えてきた

【ニュース Pick Up】日本の死命を制する中央アジア戦略[桜H22/6/18] SakuraSoTV

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茅原 郁生 Ikuo Kayahara
拓殖大学名誉教授
1938年生まれ、防衛大学校卒。陸上自衛隊で陸幕戦略情報幕僚、連隊長、師団幕僚長等を経て冷戦後に防衛研究所で文官転官(元将補)、研究部長など。1999年に拓殖大学教授就任、昨春退職し名誉教授に。
著書に『中国軍事論』(芦書房)など、編著に『中国の軍事力ー2020年の予測』(蒼蒼社)など多数、防衛省オピニオンリーダー、日本戦略研究フォーラム政策委員、日本防衛学会理事など。

菅首相の誕生 熱烈歓迎する中国の胸中

菅首相は所信表明で日米同盟を基軸に置くと演説したが、元々親中派の菅首相にとって、それは普天間問題解決のためのポーズでありダブルスタンダードではないかと疑問がある。
 

 菅直人首相による初の所信表明演説は、「いのちを守りたい」などを訴えた鳩山由紀夫前首相の演説に比べれば、現実路線にシフトしたといえる。一方で、憲法や教育問題など国の在り方に直結する課題に踏み込まなかったのは残念だ。
(中略)

 「政治とカネ」の問題についても、鳩山氏や小沢一郎民主党前幹事長の辞任で「けじめがつけられた」としただけだ。2人が関係する疑惑解明に民主党が動こうとしなかったことに国民が絶望したことを、もう忘れたようだ。
 「現実主義を基調とした外交を推進」に異論はないが、中国の軍事力増大をどう直視するかがポイントだろう。「中国とは戦略的互恵関係を深める」というだけでは、安全保障への認識は不十分と言わざるを得ない。

 普天間問題でも、「先月末の日米合意を踏まえる」と語ったが、力点はむしろ沖縄の負担軽減に置かれ、この問題をどう決着させていくのか具体的な言及はなかった。首相交代による支持率急上昇に紛れて、前政権の失策に知らん顔では、首相がいう「最大の責務は国民の信頼回復」がどうして実現できようか。

 経済・財政・社会保障を一体的に立て直す「第三の道」についても、どう実現させていくのか手順を示さなかった。そもそも問題点が多い。社会保障では少子高齢化に伴う負担だけをみるのではなく、雇用創出などによる成長を強調してみせた。だが、非効率な現行制度を改革しなければ、単に財政負担が膨らむだけだろう。(産経新聞 2010.6.12)

 菅直人首相は14日の衆院本会議で、過去に北朝鮮による拉致事件の実行犯、辛光洙(シンガンス)元死刑囚の嘆願書に署名したことについて「対象の中に辛光洙が入っていたことを十二分に確かめずに署名したことは間違いだった。従来から反省している」と述べた。首相が就任後に嘆願書への署名を謝罪したのは初めて。菅原一秀氏(自民)への答弁。(産経新聞  2010.6.14)

菅首相の誕生 熱烈歓迎する中国の胸中

WEDGE Infinity 2010年06月09日(Wed) 石 平

 菅首相の誕生に対して、中国メディアも高い関心を示した。6月4日付の国際問題専門紙・環球時報は「菅氏は中国との友好を訴え、(母校・東京工業大学の)中国人留学生の春節(旧正月)行事にも10年以上連続で参加している」と紹介したのに続いて、同じ環球時報の電子版は記事を掲載して、菅首相のことを「史上最も革新的な首相」だと絶賛した上で、「(菅首相の下では)日中関係のさらなる強化につながる」と期待感を示した。

 中国の日本問題専門家たちも一概に、菅首相の誕生を歓迎する論調である。中国網日本語版(チャイナネット)は6月5日に伝えたところによると、前出の清華大学の劉江永教授は「日中関係の問題で菅直人氏は鳩山由紀夫内閣の方針を引き継ぎ、日中関係において非常に重要な役割を果たしていくだろう」との見解を示した。

菅首相が称賛される2つの理由

 その中で劉教授はとりわけ、菅直人氏は従来より「台湾独立」への反対を明言していることと、日本の「対中侵略」を認めてこれについて謝るべきだと述べたことを取り上げた。この2点を根拠にして、彼は菅首相のことを「中国の立場を良く理解し中国と歴史認識を共有している日本政治家」として賞賛しているのである。

 6月4日という同じ日に、劉教授は自らのブログにおいても「菅直人氏は中国の古い友人」と題する論評を発表したが、その中で次のようなことを述べている。

 「6月3日、菅首相は、日中関係の発展を重要視すると発言した。日本の未来にとっては正しい選択であり、新首相が日中関係に新たな活力を注入してくれると期待している。菅首相は日本の親中派閥。平和的な発展を提唱し、正しい歴史認識も持っている。日本首相の靖国参拝に反対し、アジア諸国との友好的な協力関係の構築を提唱してきた。日米関係と同時に、中国との協力関係深化も重視している。私たちは菅政権の間に日中関係がさらに緊密化することを望んでいる」

問われる菅政権の対中政策

 このように、菅直人首相の誕生を受け、中国の政府とオピリオンリーダーの専門家たちはいっせい「熱烈歓迎」の姿勢を示し、外国の指導者にたいしては異例とも言うべき大賛辞を捧げているのである。その代わりに、総理大臣を辞めたばかりの、もう一人の「古い友人」であるはずの鳩山由紀夫氏のことがもう過去の人の如く、とっくに忘れ去られたようである。
 もちろん、まさしく前出の劉教授が指摘したように、菅直人氏は従来より、「台湾問題」と「歴史認識問題」という二つの中国にとっての「重大問題」に関して、まったく中国の国益に沿ったような中国寄りの立場を取っていることは、彼が中国によって大歓迎された最大の理由であることは明々白々である。

 だとすれば、中国側の思惑とは違った日本の立場からしては、これからの菅政権の対中政策の展開は、鳩山政権以上に、日本の国益よりもむしろ中国の国益に大いに適うような外交になるのではないかと憂慮しなければならないところだが、菅政権が樹立直後に行った最初の対中外交の施策を見れば、これはけっして杞憂でないように思える。

 菅首相は就任早々、ある経済人を中国大使に任命する方針を固めたそうだ。経済人はえてして、中国を重要マーケットとして見る向きがあるのも事実。中国側の主張に引きずられ、冷静な日中関係が構築できないという事態を招かないか、菅政権の手腕が問われている

【オピニオン】菅首相は米日関係を修復できる
マイケル・グリーン

ウォールストリート・ジャーナル 2010年 6月 14日 14:29 JST

 日本で民主党が政権を取ってから米日関係が緊張している、というのは控えめな表現だ。昨年9月に発足した鳩山由紀夫前政権は、米抜きの「東アジア 共同体構想」を通じて同国の影響力を弱める方針を示した上、在沖縄米海軍基地移設計画に待ったをかけ、アジアに大きなプレゼンスを有する米国に対する日本の協力姿勢に 疑問を呈した。

 また、反官僚キャンペーンを展開したため、経験の乏しい閣僚が事務方の作業をし、脚本家や評論家が官邸で安全保障政策の策定に当たるなど、政策決定過程が混乱した。最悪だったのは、当時の民主党幹事長だった小沢一郎氏に、同盟反対・反市場主義を掲げる連立与党の社民党と国民新党の意向をくんだ決定をさせたことだ。

 後任の菅直人首相は、外交政策や安保政策での実績はほぼ皆無だが、こうした過ちの修正には熱心なようだ。就任最初の週に米日同盟が外交の基軸であると述べた。普天間飛行場の移設計画については米日合意を踏まえる方針を示した。中国訪問より前にオバマ米大統領と会談するため上海万博訪問を見送った。アジア太平洋経済協力会議(APEC)で、米も含めた太平洋自由貿易圏に関する計画を提唱した。なお一段と心強いのは、菅首相が小沢氏の影響力を抑えたことから、民主党の重力の中心が前原誠司国土交通相と関係の深い国防の現実主義者側に近づいたことだ

 以上はみな明るい兆しだが、米ではなお、オバマ政権は鳩山氏の価値を低下させたため、これから日本国民の復讐を受けるとの論評がある。これは少し違う。在沖縄米軍の再編で現実的な案に至る見通しを失う危険を冒さない範囲で、米政府は民主党政府に対する「戦略的忍耐」を示した。日本のメディアは全般に、両国関係の悪化の原因がもっぱら鳩山政権にあると断定している。世論調査では、米日同盟支持率や対米好感度は横ばいを維持した一方、鳩山首相支持率は20%を下回った。

 より大きな問題は、オバマ政権が菅政権の誕生に安堵(あんど)し、両国関係に関して自己満足の自動操縦モードに陥いる恐れがあることかもしれない

 この9カ月の米政府は、アフガニスタンからイランまで外交上の課題が山積し厳しい状況にある。筆者が参加したブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)では、早期に対日関係でハイレベルの戦略セッションが1つあり、その後の日本政府との連携は共同戦略を理解し日本との共通の価値や利害を信じる当局者にスムーズに伝わった。しかし、オバマ政権のNSCでは、ハイレベルのセッションが多数あるらしく、日本との同盟関係の軌道維持に腐心しているようだ。事態が安定したように見える現在、真に危険なのはワシントンの日本疲れだ。

 今は米国が米日同盟関係への注意を緩めるべき時ではない。米政府はこれまで9カ月にわたり日本政府に対して守勢にあるが、中国政府は東シナ海や南シナ海で活発に活動しており、核技術を手にした金正日総書記は朝鮮半島における抑止力と考えるものをちらつかせている。北朝鮮政府が起こしたとされる韓国の哨戒艦沈没事件は、北アジアの防衛問題に再び目を向けさせた

 米国と日本は、太平洋における戦略的均衡がこれ以上崩れないよう新たな戦略を打ち出す必要がある。日本政府は中期の防衛政策を策定中であり、数カ月後に報告書がまとまる予定だ。この報告書では米やアジア同盟国との安保協力強化が勧告される公算が大きい。オバマ政権がアジア戦略にこれを取り込めば、米日関係50周年に際して11月に予定されているオバマ大統領訪日で、同盟関係に関して明確なビジョンを打ち出せるはずだ。主な要素として、両国の防衛における相互の役割と使命、アジアの持続可能な発展と民主主義的規範のサポートの調整、米日二国間の経済提携協定や一帯の貿易自由化に向けた取り組みを盛り込むべきである

 両政府はまた、基地移設に関して再び沖縄からの支持を築く戦略が必要になるだろう。鳩山氏による突然の転換とポピュリズムのため、菅首相は正真正銘の政治的混乱を引き継ぐことになった。最悪のシナリオは、日本政府に対するフラストレーションの高まりに乗じて基地反対派の候補者が11月の知事選を勝つというものだ。そうなれば菅首相は、基地再編に関する米政府への言明を放棄するか、国会で法案を成立させて知事の決定を覆さなくてはならなくなるだろう

 米日同盟をめぐる事態は改善しているようだ。菅首相は民主党政権下での外交政策の軌道に関する不透明性を払しょくすべく重要な措置を講じている。他のアジア諸国は、敵も味方も同様に、オバマ政権が現状を超える日米防衛戦略を持つか否かを見極めることになる
 (マイケル・グリーン氏は、戦略国際問題研究所《CSIS》の上級顧問兼日本部長)

【中国軍のエアパワー】8/8 今やまさに覚醒の時!

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

今やまさに覚醒の時!


防衛省が次期主力戦闘機として導入を計画しているF-35統合打撃戦闘機。1機が約90億円する〔AFPBB News〕

 エアパワーにはエアパワーを持ってしか対応できないという厳しい特質がある。
 軍事学者のジュリオ・ドゥーエは「軍が制空権を一旦確保できれば、敵の物質的な目標から抵抗意志の破壊まで、いずれも意のままに確保できる」と予見した。
 また『航空作戦(The Air Campaign)』の著者ジョン・ワーデン大佐は、「すべての作戦に航空優勢の確保は不可欠である。いかなる国家も敵の航空優勢の前に勝利したためしはなく、空を支配する敵に対する攻撃が成功したこともない。また、航空優勢を持つ敵に対し防御が持ちこたえたこともなかった。反対に航空優勢を維持している限り、敗北した国家はない」としている。
 中国空軍が、シーパワーの近代化も含め、アジアの中で既に台湾を超えるエアパワーとしてのポテンシャルを保有しつつあるという現実は、我が国の安全保障を戦略的に考えた場合、等閑視できない厳しい状況であると深刻に認識しなければならない。

 中国のような力の政治を信奉する国家に対しては、抑止力としてのバランス・オブ・パワーのパワーポリティクス認識を絶対に欠かすわけにはいかず、毅然としたカウンターフォースの提示とこれに対応する強い国防意思が必要とされる。
 堅固な日米同盟関係は我が国の安全保障に係る重要な基軸であるが、まずは「自らの国は自ら守る」という強い意志を持って体制を整えることこそ、我が国防衛のための大前提事項である。
 我が国のエアパワーは現在、保有戦闘機が陳腐化し、その老朽更新を速やかに実施しなければならない時期を迎えている。加えてその体制整備には10年単位のリードタイムを必要とする。早々に所要の意思決定を実施すべきことは申し述べるまでもない。

 また、防空すべき範囲は広いもののエアパワーに関する必要な「量」を十分に準備できない我が国としては、エアパワーの「質」に関する優位性を十分に確保することが紛争抑止の大きな要となる。
 現在、技本実証機プログラムで推進されている自前の次世代戦闘機取得に関する挑戦は、極めて重要なプログラムとなる。また、我が国周辺海域での空母等の遊弋を牽制可能な長距離対艦ミサイル等の整備をきっちりと準備することも、不要の紛争を抑止することにつながる。

 また、効果的なエアパワーの運用に宇宙の有効活用は欠かせない時代になる。大陸間弾道弾の警戒監視、情報収集、作戦機とのネットワーク構成、GPS、ターゲティングなどと、将来の作戦に衛星の活用は必至である。

 中国の「宇宙航空一体」の構想に後れを取ってはならない。
 さらに、相互の信頼を欠いた同盟関係は維持できるものではない。足手まといになる軍隊と共に戦うなど、自らの命を危うくする以外の何物でもない。
 日米両軍の運用態勢をさらにポテンシャルの高いものにするため、自衛隊は自らの装備・体制の質を上げ、戦闘員の能力を米軍並み以上に向上させる必要がある。
 日米共同訓練の機会は貴重である。航空自衛隊はアラスカやグアム基地等において、米軍とより実戦的な共同訓練を重ねているが、今後さらにこれらの訓練を積み重ね、より緊密で信頼に満ち溢れた共同戦闘態勢構築を追求すべきである。
 最後に、国の防衛は総力戦である。

 エアパワーやシーパワーを有効に機能させ、紛争を抑止し、国益を守り国民の安全を全うするには、「威嚇戦」「麻痺戦」「攻略戦」「世論戦」「心理戦」「法律戦」「メディア戦」「外交戦」「エネルギー戦」等といった極めて多次元の凌ぎ合いにも臆することがあってはならない。
 国家・国民の覚醒と、これらに対する強い対応意志が問われている。

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【中国軍のエアパワー】7/8 侮るべからず、「中国軍の軍事戦略および軍の近代化傾向」

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

侮るべからず、「中国軍の軍事戦略および軍の近代化傾向」

中国エアパワーのトランスフォーメーション状況について縷々分析してきたが、その近代化傾向を見て感ずるのは以下の点である。
中国は共産党一党独裁体制であり、その権力基盤を軍隊に置いている。また、共産党自身の政権を長期にわたって維持しているため、その安全保障政策にブレがなく、非常に長い視点で自国の国家防衛戦略を策定している。

現在の中国軍の近代化傾向を可能にしたのは、単に経済・技術の発展ではなく、建国以来、一貫した安全保障政策を怠らずに行いつつ、各時代で最も費用対効果の高い体制整備を選択してきたことによるものと考えられる。

軍事力が比較的に劣る時には外交や経済でカバーし、また軍の近代化が可能になった現在では、軍に驚異的な予算投資を継続しつつ、戦略的にエネルギー政策を拡大するとともに、上海協力機構による地域覇権の追求や軍事力を背景とした海洋進出を実施するなど、国家を挙げて大国中国のポテンシャルを上げつつある。

政権が代わるごとに安全保障政策がぶれるがごとき愚策は中国にはない。
また、過去の戦いからしっかりと教訓を得ている。日清戦争や台湾戦争、朝鮮戦争、中越紛争など、中華人民共和国建国以来のほとんどの戦争で軍事的に勝利し得なかったという屈辱的な経験や、米国などによる近代戦の分析を極めて熱心に分析し、自らの安全保障政策に生かそうとしている。

その際、軍隊の近代化などの及ばない部分については性急な改革をするのではなく、周辺の軍事的な緊張度、自国の経済的な余裕度等に応じ、身の丈に合った軍事力の整備をしている。
軍事力の質を追求せず、人海戦術という世界最大級の量に訴える一方、核保有による安全保障の最終担保を確保し軍事大国の一角を成すとともに、宇宙やサイバースペースにおける優位を追求するなど、ユニークかつ合理的な軍事戦略を取ってきている。また、軍事大国であることを国威発揚の手段として巧みに活用している。
さらに、戦略及び戦術の手段が多面的及び立体的である。

台湾に対する対応も、「威嚇戦」「麻痺戦」「攻略戦」を訴える一方で、「世論戦」「心理戦」「法律戦」「メディア戦」「外交戦」「エネルギー戦」などといった極めて多次元の戦略を長期にわたって適用しようとしている。
これらは台湾を越えて活用されるに違いない。

中国軍の近代化傾向を見るうえで注意しておかなければならないことは、かつての米ソのように強大な正規軍による力対力の直接的な衝突ではなく、また米国流の近代化を単純に模倣したものではない。
中国のエアパワーの近代化はそれらに加えて、今まで培ってきた多次元の非対称戦のノウハウも適用するという、バランスの取れた非常に手強い相手になる恐れがある。
中国の国家戦略は非常に重層的で精緻かつ狡猾であり、極めて長期的な視点に立脚している。そのような国家に対してナイーブに対応するのは最低の愚策であり、状況によっては我が方も同様の強かな国家戦略で臨む覚悟が必要である。

かかる戦略立案に関しては小論のテーマではないものの、所要の施策を講ずる際には、必ず大前提として、その大戦略を念頭に置いておく必要がある。行き当たりばったりの安全保障政策は功を奏さない。

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【中国軍のエアパワー】6/8 多様化する「統合部隊運用能力」の向上

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

多様化する「統合部隊運用能力」の向上

人民解放軍は2006年以降、「機械化条件下の軍事訓練から情報化条件下の軍事訓練へ」と転換を図り、「情報化条件下における局地戦に勝利」するための「核心的能力」を高めることを軍事訓練の基本的重点と位置づけている。

さらに「核心的能力」に直結する「多様化する軍事任務遂行能力」の向上を図ることを、基本的な目標としている。
2009年からは「情報化条件下における一体化統合作戦能力の向上」を重点とした軍事訓練および評価大綱が正式に施行され、合同戦術訓練基地の運用・管理体制の確立および指揮・装備操作及び実員対抗等が活発化している。

2009年の軍事訓練の特徴として、実戦化、透明性の確保および非軍事行動の重視が挙げられる。
中でも、軍区をまたいだ訓練基地での実動演習である「超越2009」や、広州軍区が計画した全軍の砲兵、防空兵による情報化条件下における精密打撃実員実弾研究性演練検討活動の「火力2009」や済南軍区の「前峰2009A」、陸空統合火力打撃演習、解放軍の兵力投射能力を検証した「空挺機動2009」、国際テロを意識した演習である「長城6号」、軍・武警・民兵による海上統合救援演習である「鷲海2009」などにおいて、エアパワーおよびシーパワーの活用に関わる統合運用体制等が着実に検証されていることは注目に値する。

着実に進展している「次世代戦闘機開発プログラム」

ステルス性と高機動性を併せ持つ、米空軍の第5世代、F-22航空支配戦闘機(写真はウィキペディアより)

一般報道によると中国は、米空軍のF-22やF-35に相当する第5世代戦闘機と称される戦闘機をXX-Jのプロジェクト名で1990年代から開発している模様である。
XX-Jには、J-12、および、J-13(J-14)の2種類があるとされている。このうち、J-13と見られる機体の画像が公開されており、J-13に特徴的なカナード翼や2つの垂直尾翼が確認できる。ただし、現段階ではJ-13の特徴や詳しい性能は不明である。

何為栄・中国空軍副司令員は2009年11月8日のテレビインタビューにおいて、「第5世代戦闘機については、間もなく初飛行を行い、その後試験飛行段階に入り、8~10年後(2017~2019年)に部隊配備が可能」と発言した。

「間もなく」がどの程度の期間であるか不明であるが、何らかのメドが立った可能性があることは考えられる。
2009年11月23日の『新華網』によると、空軍関連部門責任者の発言として、「最近、メディアに取りざたされている『第5世代戦闘機』とは、J-10の改良型を指す」という報道があった。
副司令員の言及した「第5世代機」は成都開発モデルの可能性がある。また2009年11月11日、『環球網』に、J-10副総設計士(成都航空機工業公司所属)の発言として「中国の経済力・技術力から、F-22の水準に到達し超越することは可能。ただし、10年単位の期間が必要」と報道された。

2009年11月12日『漢和防務評論』(カナダの中国専門誌)に平可夫編集長の発言として、「中国は第5世代機に必要なエンジン、レーダー、複合材等の分野で世界の先端水準と大きな差がある。たとえ自主開発するにしても、初飛行は少なくとも10年後、部隊配備完了は最も楽観的に見積もって15年後である」と掲載された。

ロバート・ゲーツ米国防長官は2009年7月シカゴでの演説において、「中国の第5世代戦闘機は2020年以前に保有する見通しはない」と発言するとともに、「通常戦に関しては将来においてもその脅威対象や地域および戦争形態なども概ね掌握できており、米国にとっては十分対応可能な課題である」として、米軍の第5世代機に関する先進プログラムを抑制することとした。
この判断は、現在戦っている非対称戦に勝利することが米国にとっての最優先課題であるとしても、中国やロシアなどに対して第5世代戦闘機等先進兵器開発のための時間的余裕を与えてしまったとも考えられ、将来のエアパワーバランスに微妙な影響を与えかねないものと懸念するところである。

いずれにしろ、中国軍の先進技術動向には高い関心を持って注目する必要があるとともに、我が国としても技術趨勢に遅れることなく、さらに高度の先進技術プログラムを推進していかなければならない。

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【中国軍のエアパワー】5/8 深刻な「電網一体戦」の脅威

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

戦略的な「天空一体」の作戦能力

中国エアパワーの近代化は、中国の宇宙作戦能力強化と密接にリンクしている。
2009年11月5日付の「中国国際放送局」のウェブサイト『国際在線』によると、中国空軍司令員、許其亮上将は、人民空軍創立60周年記念日に際してのインタビューにおいて「中国空軍は航空宇宙作戦能力を強化しなければならない」と強調した。

現在の情報化条件下における作戦重心は、地上から航空宇宙空間へと転移しつつある。宇宙の活用は、将来の航空作戦において戦略的に優位な位置に占位することとなり、極めて重要になる。
中国は既に「航空宇宙一体、攻防兼備」の空軍戦略を確立しつつあり、航空宇宙時代に適合した先進の航空軍事力を建設しつつあると認識しなければならない。

深刻な「電網一体戦」の脅威

中国はサイバー戦に強い関心を有していると見られており、サイバー戦の専門部隊を編成し積極的に訓練を行っていると見られている。
中国がサイバー戦に関心を有している背景には、米国の軍事システムが高度に人工衛星やコンピューターネットワークに依存していることに着目し、その「情報化条件下の局地戦」にこそ中国勝機の可能性を見出していることによると考えられる。

米軍は、中国軍がサイバー戦によって敵の指揮統制系統の破壊を目指しているところに中国の先進的発想の存在を認め、その発展に強い関心を示してきた。今年度は『中国の軍事力』(2009)に「電網一体戦(Integrated Network Electronic Warfare)」という表現で強調されている。

中国軍は「情報化条件下での局地戦」を戦って勝利するというドクトリンを基軸としている。そして、そのネットワーク化された戦力を活用して、台湾に焦点を当てた従来の任務から地域防衛態勢の強化へと重点をシフトさせつつある。

この「情報化条件下での局地戦」は、陸・海・空・宇宙・電磁周波数の広い帯域にわたって軍事作戦が遂行される。このドクトリンの焦点は、最先端情報戦能力の整備に勢いを生じさせることであり、局地戦闘空間において優位を維持することである。

中国の軍事戦略家は、情報優位こそ紛争における勝利のための必須の要件であると考えるようになってきている。
中国軍において情報化を突き動かしている中心的戦略の1つは、敵のネットワーク化情報システムを攻撃することを狙ったコンピューターネットワーク作戦(CNO)、電子戦(EW)、キネティック(動的)攻撃の一斉利用である。

そうした様々な中国軍部隊が、事前に決定された時間に利用することのできる、あるいは戦術的情報が保証されるような「盲点」を生じさせる戦略を追求しようとしている。
敵の情報・監視・偵察(ISR)システムといった死活的な目標に対する攻撃は、主に、強烈なジャミング(電波妨害)システムや衛星破壊(ASAT)兵器を備えたEW及び対宇宙部隊の主たる任務となる。敵のデータ及びネットワーク攻撃は、コンピューターネットワーク攻撃及び利用を専門とする部隊が担うとされている。

中国軍の考えているサイバー戦は航空作戦と同時並行的に、あるいは航空作戦発起以前になされるものと考えられ、場合によっては戦う以前に勝負は決しているかもしれない。
我が国ではサイバー戦の深刻さに関して、国民的リテラシー(社会的に必要となる基本的能力、知識)の一部をなしているとは言い難く、米国の抱いている危機意識の度合いと大幅にずれている。
このことは、サイバー対処に関わる日米共同対処を考えるうえにおいても大きな懸念材料である。米空軍は昨年サイバー専門部隊である第24空軍を新編し、将来の深刻なサイバー戦に備えようとしている。我が国としてもこれに倣い、早急に相応の体制を準備する必要があると考える。

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【中国軍のエアパワー】4/8 「空母建設」の野望

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか


日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

「情報化条件下の局地戦」を戦い、勝利する

中国と米国の軍事能力には、いまだ相当の開きがある。よって当分の間、中国軍は米軍と同じ土俵で戦うのは得策ではなく、そこは中国一流のやり方で米軍の攻撃力をかわそうとしている。
中国軍が保持しようとしている「アクセス拒否」(anti-access)および「地域拒否」(area-denial)能力は、極めて複雑かつ多様である。

中国軍の言う「情報化条件下の局地戦を戦い、勝利する」とは、戦略ロケット軍による一気呵成のロケット攻撃はもとより、通信ネットワーク、指揮中枢、作戦インフラ、政治経済中枢などに対する直接攻撃に加え、サイバー攻撃、威嚇・恫喝あるいは欺瞞などとあらゆる手段を講じて、局域の作戦に勝利することを目指すものと考えられる。

米軍の介入に際しては、いわゆる「新三打三防」(ステルス攻撃機、巡航ミサイル、武装ヘリコプターに打撃を与える(新三打)、電子妨害、精密攻撃、偵察監視を防御する(新三防))で対応するとされている。実際具体的にどのような近代戦になるかは明確にされていない。

中国軍の作戦指導要綱には、「機能を集約し緊要な地点を集中攻撃せよ」という原則に忠実であれと記載してある。このことは消耗戦を原則としてきた中国軍の教義変更を示す兆候として、注目しておかねばならないことである。

また、中国の中央軍事委員会は2003年12月『中国人民解放軍政治工作条例』を改定・交付し、「世論戦、心理戦、法律戦」の「三戦」展開を新たに追加した。
この「三戦」は、人間の思想・意識を目標とし、戦場の物質・技術手段や情報メディアによって「我に有利・敵に不利」な主導体制を作為することにあると言われている。「三戦」の考え方には、老獪な『超限戦』の考え方と一部通ずるところがある。

また、近年では戦術レベルの訓練においても「三戦」を訓練科目としており、「三戦」の考え方が末端の部隊レベルまで浸透していると見られる。
一方で、『孫子の兵法書』に「兵とは詭道なり」のくだりがある。その兵法こそ現代にも生きる中国流の戦い方であり、その時々の敵情に応じて生み出す臨機応変の勝利の追求こそが、中国では古来から普遍のものなのであろう。

「空母建設」の野望


ロシアが中国に売却した空母「ヴァリャーグ」(ウィキペディアより)

中国海軍の空母建設の野望については既に議論がなされているのでここでは詳細な分析は避けるが、いずれにしろ、「中国が領海主権及び海洋権益の確保、対外貿易及びエネルギーの海上輸送路の保護及び日本やインド等の域内における海上強権国の脅威に対抗するためには、空母保有を含め、中国の海上作戦能力の発展が必要である」と考えていることは確かである。

しかし、空母建設は中国にとって課題の多いプログラムであろうと考える。非常に高価な建設・維持費はもとより、技術上の困難性に加え空母艦隊の脆弱性をいかに克服するかという課題もある。
米国の一部には、中国が空母建設に多大の軍事費を浪費すれば米海軍艦隊が最も脅威と認識する潜水艦や弾道ミサイル建造に対する予算配分が減少するので好都合であるとか、中国の戦闘機などのハイ・バリュー・アセットが空母に集約されるので攻撃能力の圧倒的に高い米軍にとって格好の攻撃目標となるとする穿った見方もないわけではない。

こうしてみると、空母建設の野望は中国軍にとっては、米軍来援を阻止する実効的な戦力としての安全保障上の必要性というより、「中国国民のナショナリズム高揚にある」とする見方の方が妥当かもしれない。
ただし、戦力格差の著しい米軍にとってはさほど脅威にならないかもしれないが、我が国をはじめとする周辺の海洋国家にとっては、地域の軍事バランスを大幅に変える存在となる。
周辺国に不要のセキュリティージレンマを引き起こしたり、相互の国益を損なうような不測の事態が生起したりする恐れが全くないとは言い切れない。
中国の空母建造の野望に対しては、その意図を確認しつつ深刻な懸念を継続して表明していかなくてはならない。併せて、その行動を抑制する必要な対抗手段(所要の戦闘機及び空対艦ミサイル等の開発等)を準備する着意が必要である。

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【中国軍のエアパワー】3/8 「国土防衛型」から「攻防兼備型」エアパワーへの変貌

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

直視すべき「中国軍エアパワーの近代化構想」

中国人民解放軍司令員、許其亮上将は、2009年11月の空軍創隊60周年記念式典において、「21世紀は空の時代。無限の空域を制すれば、陸上、海洋、電磁領域において戦略的主導権を掌握できる」と述べた。
これは中国が宇宙での作戦と連動した形で、質量ともに世界のトップレベルの空軍を構築する意欲を鮮明にしたものと受け止められる。また、「空および宇宙での軍事競争は避けられず歴史的必然だ」と述べていることにも配意しておかねばなるまい。

中国空軍は、近代化改革への実質的着手として、空軍発展戦略および対空・ミサイル防衛等の重要事項に関する研究開発を推進するとともに、大量の主要装備の世代交代・改善を図りつつ、精密誘導ミサイルのシリーズ化および早期警戒・偵察機等、大型情報収集装備の運用を推進している。

また、軍事訓練の全面的発展を推進するとして、現代戦を研究し想定した使命課題に基づく集中訓練を実施するとともに、全軍初となる大型の電子戦訓練場を設立するとともに、軍区空軍による複雑な電磁環境下におけるシステム対抗訓練を実施している。

空軍の将来的整備構想は、21世紀中葉までに優れた政治思想、適切な規模、合理的な部隊編成を有し、安全保障上の多様な脅威へ対応できる「情報化条件下における局地戦」での勝利および多様な軍事任務遂行上のニーズを満たすことが可能な戦略空軍へと整備することとされている。

また、「機械化」から「情報化」への転換、「航空戦力型」から「航空宇宙戦力一体型」への転換、および「国土防衛型」から「攻防兼備型」への転換を実施している。
そして、「長距離から精密な航空攻撃」「情報化条件下における敵の航空攻撃対処のための防空・ミサイル防衛作戦」「航空・宇宙・地上戦力が一体となった情報支援」「空地協同による電子戦・サイバー戦」「全方位への戦略的戦力投射能力」等の本来任務における軍事力を全面的に向上させることとされている。

看過できない中国軍の「戦略投射能力の向上」

中国は米国のような「グローバル型軍事力」こそ追求しないが、グローバルレベルで兵力を運用できる能力を備え、少なくとも本土以外のエリアで兵力を運用できる能力を備えた「有限グローバル型軍事力」あるいは「有限対外投射型軍事力」を整備していくとしている。

具体的には、長距離進攻型の作戦プラットホーム、軍事力投射のための技術手段、本土を越えた軍事行動を指揮統制できる宇宙システム、柔軟な編成が可能で両用作戦能力を有する統合部隊等の整備が必要であるとしている。

中国軍におけるエアパワー近代化の中心にある重要な概念は、この「有限対外投射型軍事力」の整備に焦点を当てた、いわゆる「戦略投射能力向上」構想であろう。
それは一見抑制的かつ平和的であり、米国のグローバルな軍事力には挑戦しないという印象を受けるが、懸念を抱かざるを得ないのは、実は我が国の領土領空や排他的経済水域も、この中国の言う「有限」の範囲内であるということなのである。

中国はこのように周辺地域のみならず、国益上必要な中東に至るシーレーンや資源供給国を「有限」の範囲内と称して、一見温厚な施策により国際社会での摩擦を巧みに回避しているのである。

「国土防衛型」から「攻防兼備型」エアパワーへの変貌

中国軍のエアパワーは元来、地理的、歴史的に「国土防衛型」であった。しかしながら、今や中国を侵略するという国などないにもかかわらず、中国軍は強力な「攻防兼備型」エアパワーの整備に躍起になっている。

中国軍は、米軍を範として、強力な攻撃能力こそ戦争を終結できる(あるいは中国が生き残れる)重要な要素と考え、熟考の末「国土防衛型」から「攻防兼備型」へとトランスフォーメーションしなければならないと考えている。

そもそも中国は、「軍事作戦の歴史は攻勢作戦の歴史であり、強力な攻撃能力なくして国の防衛は成り立たない」と考えているところがある。
朝鮮戦争を戦った毛沢東の「およそ戦争の目的の中で最も重要なのは敵を消滅することで、自分を守ることはその次である。(中略)敵を消滅させる主要手段にできる攻撃こそ最も重要で、敵を消滅させる補助手段や自分を守る手段にできる防御は次に重要」という戦いの原則は、現代の中国軍にも脈々と継承されているのである。

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