【迷走する普天間問題】2/5 沖縄駐留海兵隊の役割
徳之島もグアムも論外、長崎と辺野古を提案する
迷走する普天間問題に元空将が緊急提言
JBPRESS 2010.05.19(Wed) 岡本 智博
沖縄駐留海兵隊の役割
それでは、そのようなラムズフェルド軍事戦略の中で、沖縄に所在する米海兵旅団はどのような役割を担っているのか。これが2つ目の疑問となろう。
しかし、その解説に移る前に、東アジア地域におけるトランスフォーメーション後の米国の軍事態勢について、少し詳しく言及してみたい。
2003年、当時のラムズフェルド国防長官は、先に述べたようなトランスフォーメーションが軍事分野で起きていることをいち早く認識し、韓国の盧武鉉政権(当時)からの要請もあったため、「2003年までにソウル以北の米軍を移転させるとともに、2016年には全在韓地上軍を撤退させる」と言明した。
具体的には、3万7500人の在韓米陸軍部隊のうち、当初1万2500人を帰還させ、その後、2万5000人を2度に分けて撤退させて、最終的には全面撤退するという方針を示した。
しかしながら現在の李明博大統領は、米陸軍の全面撤退方針の見直しを米国に要請し、結果的には2万5000人の米陸軍が韓国に駐留を継続することで決着した。
これは、前方駐留は時代遅れではあるというものの、政治的には平時の抑止力として前方駐留することに意義があるとする米国防省の意向が働いたと考えられ、李明博政権も全く同様の認識で米陸軍の駐留の継続を受け入れたからである。
他方、それならば沖縄からの米海兵隊の撤退については、日米間にはどのような話し合いがあったのだろうか?
米海兵隊削減に全く反応を示さなかった日本政府
残念ながら、具体的な説明は我々には届いていない。米海兵隊を7000人撤退させるとか、これを8000人にするといった具体的な数字が示されても、日本政府からの特別な反応はなく、昨年のグアム協定では、約8000人の米海兵隊員および約9000人のその家族のグアムへの移転という内容が示されているだけ。
その穴埋めとして、沖縄における陸上自衛隊を増強すべきか否かといった議論などは全くなかった。こうした我が国政界の怠慢が、あるいは無知が、いずれの政党も国家の防衛・安全保障政策をないがしろにし、鳩山首相の「抑止に対する理解不足」への反省という形で露呈したのではなかろうか。
さて話を本論に戻し、「普天間基地」には第3海兵旅団の航空戦闘部隊が配備されている。しかし、在沖縄米海兵隊はそれがすべてではなく、総勢4800人で第3海兵旅団が編成されている。
トランスフォーメーション前は1万2800人であったが、トランスフォーメーション後はグアム島に第3海兵旅団の主力1万人が配置される計画であるので、本格的な投入部隊はグアム島に所在することとなる。
しかし、こうした本格的投入部隊がグアム島から紛争地に機動展開するためには、約3~4日を要する。そこで、紛争が発生すれば直ちに初動対応部隊として沖縄駐留の部隊が緊急展開し、橋頭堡を形成し、ほかの部隊との調整を実施し、約3日間の戦闘を維持する。
そして、グアム島からの本格的対応部隊の来援を待つのである。
筆者は、グアム計画全体を知悉して、以上のように米国の戦略構想を理解した。ちなみにトランスフォーメーション以前は、本格的対応部隊である第3海兵師団は米本土に位置していたので、例えば東アジア地域への機動展開のためには、3週間を要することとなっていたのである。