22日午後、日本記者クラブ主催の9党党首討論を偶然観ていたが、野党各党は民主党との連立を拒否した。民主党が54議席を下回れば、衆参ねじれ国会となる。日本を守るためには、マニフェストにのったことは実現できず、のせないことに売国法案には精を出す、日本なりすまし政党、民主党にだけはまずは投票しないことだ。
立憲君主制をとり、海洋国家である英国と日本。日本は明治に伊藤博文らがドイツ憲法とイギリス議会制度を参考にして貴族院と衆議院の二院制や三権分立による近代国家をめざした。
1979年に登場したサッチャー政権下で国営企業の民営化や各種規制の緩和が進められ、1980年代後半には海外からの直接投資や証券投資が拡大した。この過程で製造業や鉱業部門の労働者が大量解雇され、深刻な失業問題が発生。基幹産業の一つである自動車産業の殆どが外国企業の傘下に下ったが、外国からの投資の拡大を、しだいに自国の産業の活性化や雇用の増大に繋げて行き、その後の経済復調のきっかけにして行った(ウィンブルドン現象)。
その後、1997年に登場したブレア政権における経済政策の成功などにより、経済は復調し、アメリカや他のヨーロッパの国に先駆けて好景気を享受するようになったが、その反面でロンドンを除く地方は経済発展から取り残され、貧富の差の拡大や不動産価格の上昇などの問題が噴出してきている。
さらに、2008年にはアメリカ合衆国のサブプライムローン問題の影響をまともに受けて金融不安が増大した上に、資源、食料の高騰の直撃を受け、アリスター・ダーリング財務大臣が「過去60年間で恐らく最悪の下降局面に直面している」と非常に悲観的な見通しを明らかにしている。
イギリスは今年5月、12年続いた労働党政権から保守党と第3党・自由民主党(日本の自民党とはイデオロギーが異なる社会民主主義政党)の連立政権に替わったが、現任のデービッド・キャメロン首相(保守党)は43歳でここ200年で最も若い、労組などが支持する菅民主党政権は、イギリスの労働党の一時代前を追随しているだけではないか。
出口の見えない第2の「英国病」
[2009年8月12日号掲載]
Newsweek ストライカー・マグワイヤー(ロンドン支局長)
イギリスは大英帝国の崩壊後も数十年間、国際社会で「ミニ超大国」として振る舞ってきた。経済力、文化的影響力、核保有に裏打ちされた軍事力、そしてアメリカとの「特別な関係」。そのすべてが相まって、この小さな島国に分不相応な発言力を与えてきた。
だが、時代は変わろうとしている。イギリスは昨年秋の金融危機で手痛い打撃を受け、公的資金による銀行の救済を余儀なくされ、不況の荒波に襲われた。かつて「日の没することなき大帝国」と呼ばれたイギリスだが、これまで生き残っていた帝国的野望にも長く暗い影が差し込んだ。
イギリスは世界における自国の役割の再検討を迫られている。その答えは小さなイギリス──少なくとも「今よりは小さな」イギリスだろう。
IMF(国際通貨基金)によれば、イギリスの公的債務は今後5年間で2倍に増え、対GDP(国内総生産)比で100%に達する見込み。英国立経済社会研究所は、イギリスの1人当たり国民所得が08年前半の水準に戻るまでに6年かかると予測する。
ソフトパワーもハードパワーも低下
その影響は政府の全部門に及びそうだ。国防省と外務省の予算は大幅に削減され、ソフトパワーとハードパワーの両面でイギリスの影響力は低下するだろう。ゴードン・ブラウン首相には、この流れを食い止める手段がほとんどない。この点は、今後10カ月以内に実施される総選挙で勝利を見込む野党・保守党のデービッド・キャメロン党首も同様だ。
保守党の元党首で「影の内閣」の外相を務めるウィリアム・ヘイグは先日の演説でこう語った。「イギリスがこれまでと同レベルの国際的影響力を取り戻すことは、時間の経過とともにますます困難になるだろう」
このところのイギリスは逆風にさらされ続けてきた。中国やインドのような巨大新興国の台頭はイギリスの国際的地位を低下させ、アメリカはイギリスとの特別な関係を見直す姿勢を見せてきた。
「ミニ大国」の終焉を決定付けたのがトニー・ブレア前首相の「(アメリカの)51番目の州戦略」だ。ブレアはアメリカの対テロ戦争に全面協力。アフガニスタンとイラクに兵士を派遣した。
おかげでイギリスは第二次大戦以来、最も大きな発言力を手に入れたが、この短期的な利益はブレアの戦略が国内にもたらした政治的ダメージのせいで吹き飛んだ。
一般の国民に加え、指導層の間にも「対米従属」への不満が強まった結果、ブレアの首相としての権威は傷つき、国内政策の足を引っ張った。イギリスの地政学的立場からみて対米協力のほかに選択肢はない──この古い常識はもはや通用しなくなっていた。
ことによるとブレアは、イギリスの必然的な衰退を先延ばししただけなのかもしれない。イギリスの影響力低下は世界情勢の変化がもたらした結果であり、その意味ではアメリカの相対的な力の低下と似ていなくもない。
(中略)
ブレアの「新しいイギリス」も死語に
帝国の残りかすが燃え尽きようとしているのは歴史の必然だ。予想外の金融危機と世界的な不況で衰退は加速したが、中国やインドの台頭も対米関係の変化もかなり前から起きていた。
アメリカが新興国との関係構築に努め、中国には財務長官まで派遣して米国債投資の安全性をアピールするなか、イギリスは特別扱いされないわびしさをかみ締めている。労働党政権時代が末期を迎えた今、この国を支配しているのは憂鬱と不満だ。
ブレアは首相就任から1年後、アイルランドの首都ダブリンでこう演説した。イギリスは「ポスト大英帝国の病から復活」を遂げている、と。当時はイギリス国民にとって最良の時だった。「ニューレーバー(新しい労働党)」「新しいイギリス」という言葉はまだ死語ではなかった。
首相がブレアからブラウンに交代して2年が過ぎた今、労働党政権は12年に及ぶ長期政権になり、ブラウンには「見飽きた感」が付きまとう。議員手当の不正使用をめぐるスキャンダルは政治と政治家への軽蔑に拍車を掛けた。
次のイギリス首相には同情を禁じ得ない。次の総選挙で保守党が勝利しても、12年前にブレア率いる労働党が政権を奪取したときの高揚感、すべてが変わるという感覚はよみがえらないだろう。
あのとき、国民はブレアの言葉に現実味を感じたからこそブレアの言葉を信じた。当時のイギリスは前代未聞の長さに及ぶ好況期に突入し、移民の活力でにぎわい、起業ブームに沸いていた。だが今や、すべてが消え去った。
次の首相(だけでなく、恐らくその次の首相も)には大きな試練が待っている。イギリスという存在を定義し直すだけでなく、かつてのイギリス精神を新たな形で取り戻さなければならない。
英国予算:痛みは(それほど)ない
2010.06.22(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2010年6月19日号)
幸運は勇気ある者に味方する。ゆえに英国の新政権は選挙公約を破り捨て、一からやり直すべきである。
政治家は本能的に漸進主義者だ。急進的な物言いを好むが、実際には前任者から引き継いだものをあちこち削り、少し新しいものを加えるだけで、あとは右や左に微妙に軌道修正をするくらいである。政治家も有権者も、極端な変化はなるべく避けようとする。
6月22日に緊急予算案を発表する英国政府は、2つの道のどちらを選ぶこともできる。漸進主義者の道をとり、変革を最小限に抑え、前政権である労働党の置き土産である税制や歳出の形を引き継ぐか。もしくは急進的な道を選択し、これまでの計画と自らの選挙公約をゴミ箱に捨て、過去に縛られず未来に向けた財政の形を提案するか。
本誌(英エコノミスト)が推奨する道ははっきりしている。
過去の失策の上に
ジョージ・オズボーン財務相(37)が取り組まなければならない財政赤字は、英国にとって戦後最大規模というだけではない。国際通貨基金(IMF)は5月の予測で、財政を軌道に戻すことは、すべてのG20諸国にとって最難関の仕事だと結論づけている。緊急予算案の詳細については、本誌の別項で解説している。
オズボーン財務相には、いまだ脆弱な経済が危機に逆戻りすることを避けながら、合計でGDP(国内総生産)の約7%にも達する額の歳出削減と増税を実施することが求められる。
指針とすべき原則は3つある。1つ目は、財政調整の大部分を歳出の削減で達成すること。2つ目は、新税を導入するなら主として消費を課税対象とすること。そして3つ目は、歳出削減も増税も、赤字の削減だけでなく、政府の刷新を目指して立案することだ。
1つ目の点については、稼ぎ頭として財政を支えた金融サービスや不動産取引が壊滅したことで失われた歳入を確保するために、ある程度の増税が必要とはいえ、第1に来るべきなのは増税ではなく歳出削減であることは、世界の経験から明らかだ。
しかも、10年足らずのうちに歳出総額がGDP比で10ポイントも増えて50%近くに達してしまったことを考えれば、削減の余地は十分にある。財政調整の80%を歳出削減によって実施するという政府の案は、出発点として正しい。
歳出削減の議論はしばしば、一律に削減ノルマを課して各省に実行を命じるのがよいか(スウェーデンの例)、特定の削減領域を仕分けするのがよいか(カナダの例)を巡り、不毛な議論に陥ることが多い。
オズボーン財務相は両方を実行する必要がある。この10年間に政府予算が肥大化したことを考えると、たとえわずか数%でも、一定割合の一律削減をすべての省庁に課すべきだろう。だが、今後の優先事項はこれまでとは違ってくるうえ、比較的無駄の多い部門もあるので、一律削減に加えて選択的なカットも必要になる。
そのためには(悪しき)公約を破ることになる。選挙前、保守党は医療予算の削減はしないと約束していた。しかし、歳出総額の約5分の1を占める医療サービスは、労働党のばらまきから最大の恩恵を得た部門だ。しかも、あまりにも多額のカネが医者を甘やかすためにつぎ込まれてきた。
保守党政権は、労働党がここまで財政を悪化させていたことを選挙時には知り得なかったとして、公約を破棄すべきである。
第2のターゲットは、歳出総額の4分の1以上に達している福祉だ。福祉で最大の部分は公的年金である。英国の年金受給者は欧州諸国の中でも特に割に合わない扱いを受けているので、年金支給額そのものは減らすべきではないが、総支給額は受給開始年齢を引き上げることで減らせるだろう。
これで国民が長く働くようになれば、健康にも、幸福感にも、税収にとってもプラスになる。
富裕層に対する福祉予算には、さらに削減の余地がある。例を2つ挙げれば、児童手当と冬期燃料手当で、前者は扶養児童のいる保護者すべてに、後者は60歳以上の家族のいる世帯全戸に支給されている。児童手当については所得による制限が必要だ。また、公的年金はどのみちある程度増えるから、燃料手当は廃止すべきである。
労働が可能な年齢で基本的に能力のある人たちに対する長期の手当にも、あまりに多くのカネが流れている。こうした制度は受給者のためにも、財政のためにもならない。この手当の削減には就業支援制度の改革が必要なため、困難が伴う。労働党は政権末期になってこの問題に取り組んだ。新政権はバトンを受け取って、改革をスピードアップしなくてはならない。
あらゆる公共サービスにかかわる選択は、資本支出をどれだけ削るか、という問題だ。その選択の影響は長期的なものになるため、有権者は削減に気づきにくい。経済規模の小さい国なら、物理的な社会基盤に関する限り、目標を多少小さくしても問題はないかもしれない。
だが、英国が今の危機を乗り越えるには経済成長が不可欠であり、これには道路、鉄道、そして研究施設の整備が必要である。公共投資の実質予算をGDPの1.5%分削減するという労働党の案は破棄すべきだろう。
経常支出を減らすことを考える時、公的部門の人件費は明らかに標的の1つとなる。なんと言っても、公務員は民間労働者より給料が高く、年金が充実している場合が多い。2年間の給与据え置きにより給与水準は民間と並ぶだろうが、それだけでなく、その充実した年金についても、公務員の側の拠出額を大幅に引き上げることが求められる。
公的部門の被雇用者数はこの10年間に1割以上増えており、今後、40万人程度削減する必要があるかもしれない。
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