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「コウノトリ育む農法」海越える 中国の農村支援

神戸新聞(09/11/05)
 水田の自然を再生し、安全・安心な米を生産する兵庫の稲作技術「コウノトリ育(はぐく)む農法」を、急速な都市化に伴う水の汚染に悩む中国・浙江(せっこう)省の農村に普及する計画が官民協力で進んでいる。浙江省を含む長江中下流域は20世紀半ばまでは、多くのコウノトリが海を渡って越冬した地域。コウノトリの渡りの復活を目標に日中の環境再生を進める長期的なプロジェクトとなる見通しだ。
水を張った田んぼでアメリカザリガニを捕食するコウノトリ=豊岡市加陽(2007年3月)
 神戸に本部を置く特定非営利活動法人(NPO法人)「食と農の研究所」のメンバーらが、兵庫県や豊岡市などの協力を得て実施する計画。国際協力機構(JICA)の支援を受けて事業を進める「草の根技術協力事業」を申請している。
 育む農法の導入が検討されているのは浙江省の慈渓(チーシー)市。上海を中心とする長江デルタ地帯にあり、近年は家庭排水、農薬・化学肥料、工場排水などによる水質汚染が深刻化し、日本でコウノトリが絶滅した当時と似た状況にあるという。
 メンバーは、昨年12月と今年8月に現地を訪問。副市長らから、子どもや住民向けの環境学習プログラムづくりの支援を要請され、コウノトリをシンボルとした同農法と環境学習を現地で広める事業を企画した。
 計画では、2010年度から環境教育の担い手となる教員や専門家を中国から招き、研修を豊岡で開始。2年目は現地のモデル校で環境学習を試行し、農業リーダーの研修を豊岡で始める。3年目には環境教育の教員研修を拡大する一方で、育む農法の専門家らが現地リーダーとなる農家の支援に当たる。また、生産した米を近郊の大都市圏で販売するシステムを確立することも後押ししていく。
 食と農の研究所の倉石寛さん(63)は「コウノトリを通して両国が環境の歴史と現状を学びながら、コウノトリがすめる水環境を広げることを合言葉として取り組んでいきたい」と話している。(辻本一好)
【コウノトリ育む農法】田んぼに水を張ることで、微生物からカエル、魚、クモなどさまざまな生き物がすむ生態系を再生し、その力を活用して雑草や害虫を抑え、農薬と化学肥料に頼らずに安全な米を生産する技術。2002年度から豊岡市で導入され、コウノトリの放鳥とともに拡大し、現在、県内の320ヘクタールで実施されている。
 
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