軍事、経済が急膨張する中国、その弱点は?
共産党政権の矛盾が表面化する危険性も
JBPRESS 2010.06.16(Wed) 茅原 郁生
(1)経済発展でもてはやされる中国
急成長する中国経済は、世界のエンジンと言われるように力強い発展を現に遂げている。今春の全国人民代表大会(全人代)において温家宝総理は、「政府活動報告」で2009年に中国経済がV字型回復したことを誇っている。
実際、2009年の第4四半期では10.7%ものGDP成長を見せており、通年でも8.7%の経済成長となって、世界経済の牽引車的役割を果たしている。
また中国経済は2009年にはGDPで世界第2位の日本に迫っており、世界貿易量でもEUに次ぐ第2位となって米国を抜いている。GDPでは今年中にも、日本を抜いて世界第2位になるのは確実だ。
そして貯め込んだ外貨準備高は2.3兆ドルと世界1位に突出しており、8000億ドルもの米国債を購入して筆頭対米債権国となっている。
このような中国経済の隆盛は改革開放政策の成果であり、情報機器や家電製品の例ではノート型でパソコン86%、携帯電話で57%、ルームエアコンで64%、洗濯機で43%などと世界のシェアを占めているように世界の工場と言われてきた。
実際、米国産業の中核である自動車工業でも2009年には1379万台を生産して世界一になり、新車販売台数も1364万台と米国の1043万台を抜いている。さらに造船量も2009年で4000万トンを超えて近い将来韓国を抜くと予想されており、まさに米中G2時代と言われる所以である。
今春の全人代の「政府活動報告」では、2010年のGDP成長目標を8%と掲げ、900万人の雇用を創出し、失業率を4.9%以下に抑え、物価上昇も3%以下にすることが謳われている。
このような輝かしい経済発展の成果の上に、2015年には米国のGDPが世界GDPの18.4%を占めるのに対して中国は17.0%と米国に迫る、との見方もあるほどである。このような中国は急台頭することで、自信を持って国際秩序に強引に介入してくることが多くなろう。
その経済成果を受けて、中国軍事力の強化も進んでいる。昨秋の建国60周年記念行事の軍観閲式では、国防近代化の成果が遺憾なく披露されていた。
現に1.1万人の地上行進では152種の国産新兵器を出場させ、無人偵察機や宇宙通信システムなど情報戦を中心とする新しい段階に突入した国防近代化の成果が注目された。
そこでは米本土を射程内に収めるよう1万キロメートルに射程を延伸した大陸間弾道ミサイル東風31A号が大型車載で初出現し、陸軍装備では99式戦車、野戦用防空ミサイル等が目を引き、海軍では米空母を狙う新型巡航ミサイルや「海紅旗」対艦ミサイルが車載で出現し注目された。
また空中パレードでは、総勢150機で新国産戦闘機や早期警戒管制機が初出場して関心を集めた。
このような軍事力の強化は、党軍として共産党統治体制を支えて、その正統性をバックアップする力となろう。そして国防近代化の進展は経済発展の成果であり、2009年までは前年比で2ケタの国防費の増額が続けられた努力の結実でもある。
さらに空母保有論が出ており、中国軍事科学院の戴旭空軍上校(大佐)によれば「空母は軍事的政治的プレゼンスを示し、外洋海軍には不可欠である。空母艦隊のエアカバーは航空機やミサイルでは代替できない、軍事力の核心的な地位を占める」と強調している。
そして人民解放軍がアジアで圧倒的な軍事力にまで強化されることで、その自信から関係国を威圧するなど国際秩序に挑戦してくることも懸念され、現に中国脅威論はたびたび浮上している。
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