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【中国軍のエアパワー】5/8 深刻な「電網一体戦」の脅威

攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る

JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道

戦略的な「天空一体」の作戦能力

中国エアパワーの近代化は、中国の宇宙作戦能力強化と密接にリンクしている。
2009年11月5日付の「中国国際放送局」のウェブサイト『国際在線』によると、中国空軍司令員、許其亮上将は、人民空軍創立60周年記念日に際してのインタビューにおいて「中国空軍は航空宇宙作戦能力を強化しなければならない」と強調した。

現在の情報化条件下における作戦重心は、地上から航空宇宙空間へと転移しつつある。宇宙の活用は、将来の航空作戦において戦略的に優位な位置に占位することとなり、極めて重要になる。
中国は既に「航空宇宙一体、攻防兼備」の空軍戦略を確立しつつあり、航空宇宙時代に適合した先進の航空軍事力を建設しつつあると認識しなければならない。

深刻な「電網一体戦」の脅威

中国はサイバー戦に強い関心を有していると見られており、サイバー戦の専門部隊を編成し積極的に訓練を行っていると見られている。
中国がサイバー戦に関心を有している背景には、米国の軍事システムが高度に人工衛星やコンピューターネットワークに依存していることに着目し、その「情報化条件下の局地戦」にこそ中国勝機の可能性を見出していることによると考えられる。

米軍は、中国軍がサイバー戦によって敵の指揮統制系統の破壊を目指しているところに中国の先進的発想の存在を認め、その発展に強い関心を示してきた。今年度は『中国の軍事力』(2009)に「電網一体戦(Integrated Network Electronic Warfare)」という表現で強調されている。

中国軍は「情報化条件下での局地戦」を戦って勝利するというドクトリンを基軸としている。そして、そのネットワーク化された戦力を活用して、台湾に焦点を当てた従来の任務から地域防衛態勢の強化へと重点をシフトさせつつある。

この「情報化条件下での局地戦」は、陸・海・空・宇宙・電磁周波数の広い帯域にわたって軍事作戦が遂行される。このドクトリンの焦点は、最先端情報戦能力の整備に勢いを生じさせることであり、局地戦闘空間において優位を維持することである。

中国の軍事戦略家は、情報優位こそ紛争における勝利のための必須の要件であると考えるようになってきている。
中国軍において情報化を突き動かしている中心的戦略の1つは、敵のネットワーク化情報システムを攻撃することを狙ったコンピューターネットワーク作戦(CNO)、電子戦(EW)、キネティック(動的)攻撃の一斉利用である。

そうした様々な中国軍部隊が、事前に決定された時間に利用することのできる、あるいは戦術的情報が保証されるような「盲点」を生じさせる戦略を追求しようとしている。
敵の情報・監視・偵察(ISR)システムといった死活的な目標に対する攻撃は、主に、強烈なジャミング(電波妨害)システムや衛星破壊(ASAT)兵器を備えたEW及び対宇宙部隊の主たる任務となる。敵のデータ及びネットワーク攻撃は、コンピューターネットワーク攻撃及び利用を専門とする部隊が担うとされている。

中国軍の考えているサイバー戦は航空作戦と同時並行的に、あるいは航空作戦発起以前になされるものと考えられ、場合によっては戦う以前に勝負は決しているかもしれない。
我が国ではサイバー戦の深刻さに関して、国民的リテラシー(社会的に必要となる基本的能力、知識)の一部をなしているとは言い難く、米国の抱いている危機意識の度合いと大幅にずれている。
このことは、サイバー対処に関わる日米共同対処を考えるうえにおいても大きな懸念材料である。米空軍は昨年サイバー専門部隊である第24空軍を新編し、将来の深刻なサイバー戦に備えようとしている。我が国としてもこれに倣い、早急に相応の体制を準備する必要があると考える。

 

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