中国海軍の大艦隊が第一列島線を越えて沖の鳥島まで西方海域で活動し 中国海軍の艦載ヘリコプターが2度にわたり海上自衛隊の護衛艦に90mの距離まで異常接近した問題や、普天間問題以外に日本の防空を心配するコラムである。
攻撃力を急伸させる中国空軍に備えはあるか
日本とアジアの制空権を中国が握る日が来る
JBPRESS 2010.05.31(Mon) 永岩 俊道
我が国の安全保障の課題は普天間問題だけではない。周辺諸国のエアパワー近代化傾向が著しい今、果たして、日本防空の備えは万全なのか。
急激に隆盛する国家の出現で地域は不安定化する
国際政治のリアリズムの見方によれば、急激に隆盛する国家が現れると地域は不安定化する傾向にあるという。
もし台頭する中国が、その軍事力の影響力を急速に北東アジアに及ぼそうとすれば、島嶼の領有権や経済水域における摩擦が生じ、将来的にこの地域は「不安定な多極構造」になり、現在よりもはるかに危険な地域になろう。
中国の急激な軍事力増強傾向を見るに、このような見方もあながち荒唐無稽な考え方とは思えない。隣接する大国の覇権志向に対応するためには、まず、その能力と企図を冷静かつ正確に掌握し、状況・環境に見合った適切な戦略を準備することが肝要である。
さて、今回は、中国軍のエアパワーに焦点を当てて考えてみたい。現有の海軍機、そして空母建設の野望があるのであれば、これを離発着する戦闘機等もエアパワーの構成要素となるから、その基盤となるシーパワーにも言及しながら論を進めよう。
2008年に刊行された中国の国防白書(以下『中国国防白書』(2008)という)には「中国人民解放軍空軍PLAAF(以下、中国空軍)は、国土防空型から攻防兼備型空軍に転換し、空中攻撃能力、防空・ミサイル迎撃、早期警戒・偵察、戦略投射能力(パワープロジェクション能力)を向上させる」と記されている。
ただし、この記述のみから中国空軍の将来構想について仔細に推し量ることは極めて困難である。中国空軍の言う「攻防兼備型」とはどのようなものなのか、また「戦略投射能力」向上の意図するところは何か、そもそも中国軍はどのような考え方に基づいて軍の近代化を推進しているのか等々、不明なことが非常に多い。
無闇に「中国脅威論」を唱えることは適切ではないが、近代化著しいと言われている中国軍の実態について冷静に見据えようとする着意はとても大事なことである。
そして、必要ならば、これらに対して毅然と適切な措置を講じて国防の強い意志を見せることこそ、不要の紛争発起を抑止し、我が国の安全・繁栄を末永く確保することにつながる。
J-10 Fighter-Bomber of Chinese PLAAF / Pakistan Air Force Designation FC-20 : Video 2
fightingfalcon16さん
http://ja.wikipedia.org/wiki/J-10_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
永岩 俊道 Toshimichi Nagaiwa
元航空自衛隊空将。現在は双日総合研究所防衛・安全保障チーム上席客員研究員1971年、防衛大学校を卒業し、航空自衛隊に入隊。F-15戦闘機パイロット。88年第203飛行隊長、90年米スタンフォード大学客員研究員、98年第2航空団千歳基地司令などを経て、航空幕僚監部監察官・防衛部長。2003年空将に昇任、西部航空方面隊司令官、航空支援集団司令官(イラク派遣航空部隊指揮官)を務め2006年に航空自衛隊を退職し、現職。2007年から2009年までの間、米ハーバード大学アジアセンター上席客員研究員。