JBPRESS 2010.06.10(Thu) 金田 秀昭
中でも、ハード的側面、すなわち戦争領域としての「日米同盟海上防衛戦略」を構築することは、日米両国の安全保障・防衛にとって、死活的に重要な意味を持つ。
今まで存在しなかったこと自体が不思議であるが、種々の制約はあるものの、同盟戦略の策定は現状でも全く不可能なことではないと考える。
2006年5月に合意に達した日米「2+2」協議のフォローアップ、あるいは「防衛計画の大綱」の改訂に伴う日米同盟のあり方の議論を進めていく中で、日米間の安全保障、防衛、軍事レベルの日米同盟としての共通戦略策定の必要性が喚起されれば、その一部として、またはその先駆けとして「日米同盟統合防衛戦略」や「日米同盟海上防衛戦略」構築の機運が自然に高まるであろう。
いったん「日米同盟海上防衛戦略」などが策定されれば、これら戦略文書の下に、より深化した各種の共同作戦計画が具体化されていこう。
そのうえで機が熟せば、多国間、例えば日米豪3国「海洋準同盟」における、日米同盟を基幹とする海洋安全保障上の多国間海洋協調戦略の構築などに発展させていくべきである。
ソフト的側面、すなわち非戦争領域での日米を基軸とする『地球規模海洋協力構想』としては、「海洋安全保障協盟(有志連合)」を具体的に推進すべきであろう。
「海洋安全保障協盟(有志連合)」は、新海洋戦略の『地球規模海洋協力構想』に沿う概念、すなわち、海賊やテロ、武器の拡散といった海上での不法行動に対する(非戦争領域の)「法の支配を推進するための『海洋安全保障』面での非公式の多国間協調アプローチ」であり、「平素からの海洋の安全かつ自由な利用を目的とした地域又はグローバルな国家間の有志連合」と定義されるものであり、条約や取り決めは必要ない。
海洋有志連合への参入条件は、3つの基本的な海洋利益を他の国と共有できるかということだけである。
海洋を舞台とする(1)平素から緊急時における安全保障面での協調(生存)、(2)通商や海洋資源開発といった経済面での協力(繁栄)は当然のこととして、さらに(3)海洋利用の自由を基本的理念としつつ、海洋の管理という面で、海がもたらす多様な恩恵を将来にわたって維持・育成することを真に希求するという価値観の共有(価値)も、海洋有志連合への参入の条件とすべきである。
すなわち、「海洋を巡る権益や領土問題、経済的相克、環境の保全や漁業資源の育成といった点における争点がないこと」が基本条件となる。
仮に係争点が存在しても、民主的で公正な解決が可能な国家間によって構成される連帯であることが、有志連合を維持していくうえで重要な要素となる。
また肝心なことは、そこには民主主義の理念に基づく「他への奉仕」という国家としての行動原理が根底になければならない。
日米同盟を基軸として、まずは地域の「海洋安全保障協盟(有志連合)」を推進していくこととなるが、現状から見れば、ある意味ではオーストラリア、シンガポール、インドなどとの間に既にこの協盟(有志連合)は構築されていると言ってもいいであろう。
日米同盟の本質は海洋同盟であり、米国の新海洋戦略に対応し、日本および米国の国益に合致した日米同盟としての海洋戦略が構築されるべきである。
この場合、同盟の本質的対象である戦争領域の「日米同盟海上防衛戦略」と、同盟の拡大的対象である『戦争外軍事作戦』での地域や地球規模の「海洋安全保障協盟(有志連合)」の2側面で、日米当局間の協議を進展すべきである。
後者は、米国の新海洋戦略で提示された『地球規模海洋協力構想』の脈絡にある。
日本は政府を挙げて本問題に取り組み、「防衛計画の大綱」の改訂において、国家政策文書として結実を目指すべきである。
その意味で防衛省・自衛隊はもとより、内閣府、外務省や国交省を含む関係省庁等は、日米同盟としての海洋戦略の構築やその遂行について国家的見地から適切に関与すべきである。
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「救国」 全国国民総決起集会 ダイジェスト
2010年6月9日に、「頑張れ日本!救国 全国国民総決起集会」が開催された。安倍晋三元総理をはじめ、そうそうたる保守勢力のメンバーが集結したようだ。