単独防衛は不可能、同盟国との連携求める米国
米国の新海洋戦略と、日本が果たす役割
JBPRESS 2010.06.10(Thu) 金田 秀昭
新海洋戦略では、いくつかの特徴を見出すことができる。
第1は、冷戦後、米海軍が模索を続けている(が完成の途次にある)「海洋戦略」に関する構想であり、『固定戦略』であった21年前の『海洋戦略』と異なり、これから育てていく『成長戦略』である。
第2は、多元的なグローバライゼーションの及ぼす多様な変化に対応したものである。
第3は、直接言及はしていないが、中国の海軍力拡大、対インド洋・アフリカ戦略への対抗を暗喩している。
第4は、「本土の防衛」および「戦争での勝利」と同等に「戦争の予防」を重視している。
第5は、平時の平和的使命と有事の戦争遂行能力確保(のための兵力整備)は競合関係と認識している。
第6は、しかし、現在アフガンなどで遂行中の対テロ戦争の継続は、この競合関係の緩和や『戦争外軍事作戦』遂行能力の向上に資する可能性があると認識している。
第7は、米国におけるすべての「戦略」文書がそうであったように、海洋兵力の価値啓蒙、予算確保といった点を狙っているが、現在のところその効果は不十分である。
最後に、米海軍の負担軽減、前方展開能力の維持向上、戦争の予防といった効果を目論み、各国との関係強化の中で、協調的関係構築の推進に意欲を見せている。
新海洋戦略は、『21世紀の海軍力』を基本としたハードな「海軍戦略」と、『千隻海軍構想』を言い換えたソフトな『地球規模海洋協力構想』の合体したものであると言える。
確かに形の上では、『21世紀のシーパワーのための協調戦略』の表題が示しているとおり、多元的なグローバライゼーションが進展する不透明、不確実な21世紀における「新たなシーパワー」の姿を模索してはいるが、その部分の出来具合は十分とは言えず、その意味では完成の途次にあることは否めないのである。
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