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臆せず中国に立ち向かえ

産経新聞以外の日本の新聞やテレビは、分かりにくいのに比べて米英の新聞は主張がすっきり分かりやすく気持ちがいいと思う。

米中関係:臆せず中国に立ち向かえ

(英エコノミスト誌 2010年2月6日号)

新たな超大国の居場所をつくることと、その国に譲歩することとを混同すべきではない。

 台湾はかれこれ60年も前から、米中間にくすぶる不信が噴き出すリスクが最も高い場所だ。鄧小平は1986年、台湾を「中米関係における1つの障害」と呼んだ。

 したがって、台湾に60億ドル相当の武器を売却するという米国の決定に対し、中国政府がひどくショックを受け、憤慨していると抗議したことには、恒例儀式のような趣さえあった。

 1979年に制定された米国の台湾関係法の下、あらゆる米政府機関は台湾の自衛を可能にする武装援助をする責務を負う。そして、武力による台湾「再統合」を自国の権利だとする主張を一度も曲げていない中国は、武器取引が行われた場合、やはり当然のこととして抗議しなければならないと感じる。

 こうして突風が吹き、しばし海が大荒れした後、米中関係はいつも通りの、不安定だが恐れるほどではない航路へと戻っていくのである。
(中略)

優勢に立つ中国

 潜在的な危険を強調するかのように、中国は今回、お決まりの扇情的な警告と米軍との交流停止というレベルを超えて、さらに踏み込んでみせた。米国企業に対して制裁を科し、国際問題での協調から手を引くという脅しをかけてきたのだ。

 これらの威嚇の内容は、実行に移された場合、中国の国益に深刻な損害を与えることになる。

 したがって、中国がそうした手を使ったということは、威嚇によってオバマ大統領を譲歩させられるという中国側の期待を示唆するものだ。仮に今回の武器売却計画が無理でも、台湾が検討している新型ジェット戦闘機の将来の購入を阻止したいと考えているのかもしれない。

 しかし、中国政権が異常な激しさで反応したことは、3つの危険な底流を示してもいる。

 第1は、中国による台湾政策の失敗である。台湾は馬英九総統の統治下で、中国本土とかつてないほど良好な関係を保ってきた。

 旅行、貿易、観光による結びつきが強まり、自由貿易協定(FTA)の交渉も進んでいる。それでも、「平和的統一」という中国の主目標に向けた前進の兆しはほとんど見られない。大半の台湾人は、経済協力と事実上の独立の両方を望んでいる。

 似たような失敗が対チベット政策にもつきまとう。本誌(英エコノミスト)の記者はめったに許可されないチベット取材に赴き、経済開発の成果でチベット人の忠誠を勝ち取ろうとする中国側の狙いがどうやら徒労に終わっていることを知った。

 2月初め、亡命中のチベット仏教指導者であるダライ・ラマの特使と中国の対談がいつもの膠着状態に終わったことを受け、中国はオバマ大統領に対し、予定されているダライ・ラマとの会談を行わないよう警告した。

 これもまた、何も目新しいことではない。だが、自らが主権と見なすすべてのことを騒々しく擁護する中国お馴染みの姿勢の中に、最近新たな自信が生まれている。これが第2の潮流だ。2008年後半の金融危機を首尾よく切り抜けた中国は、以前にまして強気になると同時に、邪魔されることへの忍耐力を弱めているのである――そして、その対象は「国内問題」だけにとどまらない。

 経済力を増す大国として認知された立場から、中国はその影響力を乱用してきた。コペンハーゲンで開かれた気候変動サミットでは、概して非協力的な勢力として中心的な役割を演じた。イランの核計画については大国間の合意を破壊しそうな姿勢を示しており、インド、日本、ベトナムとの領土問題ではあえて事を荒立てている。

 ありとあらゆる会議の場で、中国の代表団は発言の機会を求め、意見が聞き入れられることを期待する。

 これが危険な第3の潮流を示唆している。中国は1978年に経済を開放して以来、裕福な西側諸国に追いつこうと必死に取り組んできた。それは、中国が次第に「西側化」していくという考えにつながり、多くの中国人でさえそう思い込んだ。ところが、西側諸国の不況によって、そんな前提が崩れた。

 多くの中国人は今、先進諸国から学ぶものはほとんどないと感じている。それどころか、「北京コンセンサス」が勢力を増しつつあり、決断力のない民主主義の議論より断固たる権威主義の方が勝ると謳われている。最近のダボス会議のような国際会議の片隅では、米国の代表でさえ、自分たちの「機能不全に陥った」政治制度に絶望して愚痴をこぼしている。

 米国はもっと断固たる姿勢を取る必要がある。中国から数百基のミサイルで脅かされ続ける台湾の抑止力を増強することは、平和の役に立つ。

覇権争いではなく協調を

 したがって、オバマ大統領は台湾への武器売却を進めるべきであり、欧州の各国政府もオバマ大統領を支持すべきだ。ボーイングのような米国企業が政治的な理由で中国の得意先を失った場合、欧州の企業が代わって取引することは許されるべきではない。

 その一方で、西側は、パニックに陥って不用意な衝突に足を踏み込んではならない。中国を「封じ込める」ために徒党を組んで攻撃するのではなく、グローバルな統治の負担の一端を中国に引き受けさせる方が、西側にとって都合がいいはずだ。

 中国はグローバルな大国にふさわしい権力を求める一方で、自分たちは今なお貧困国だと言って大国に求められる責任を免れることが多すぎる。
 中国に対しては、気候変動、イラン問題への取り組みや、人民元切り上げを求めることなどで、大国としての役割を果たすよう促すべきである。世界最大の輸出国である中国にとって、国益は調和の取れた世界秩序と強固な貿易体制の内にこそある。

 恐らく最大の危険が横たわっているのは経済分野だろう。オバマ政権は既に、いとも簡単に中国に対する貿易制裁に踏み切る姿勢を見せている。もし、今度は中国が政治的な口実を使って同じことをやり、その間も元安のおかげで中国の大幅な貿易黒字が続けば、米国議会で報復措置を求める叫び声が上がり、それに対してさらに中国国家主義者が反発する事態が起きることは想像に難くない。

 だからこそ、オバマ政権と中国政府が協力してトラブルを事前に防ぐ必要がある。

 勃興してきた大国が主役の座を目指して強引に進むとき、衝突は避けられないという見方もある。だが、米国と中国は、世界的な影響力を競い合うライバル同士というだけでなく、協調から様々な恩恵を得られる相互依存的な経済同士でもある。意見の相違から衝突に至っても、誰も得をしないのである。

 
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