林 志行の「現代リスクの基礎知識」人材の回遊とアジアマーケティング
日経BP
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091030/192646/?P=1
を参考に、中央から地方の時代を考えてみる。
自民党の体たらくへの不満から民主党が政権交代した。民主党が優れていたからではなく自民党への決別だ。その民主党も4年間みてほしいというが、4年も政権を担当するかどうかは不安がいっぱいだし期待していない。この国に期待できるビジョンを示すだけの政党もリーダーもいないからだ。
民主党は、衆院選前にマニフェスト(プロジェクト企画書)で大判振る舞いをし、政権担当与党になれた(プロジェクトを受託できた)ものの、いざ運営になると経験に乏しく、理想と現実の狭間で揺れている。これらは政権奪取前から、自民党や公明党、あるいは一部メディアからも疑問視されていたところである。出口でのばら撒き以前に、入口の財源確保をどうするかが問われている。
その観点からすれば、脱官僚はこれまでの政治家の偏った官僚依存度の問題であり、行政の主体は官から政府へではなく、行政の官から民へ、中央から地方へは間違っていない。民主党の官から政治主導へ、大きな政府は時代に逆行するものでまったく見当違いである。
小沢幹事長の目的は二大政党だった。二大政党への願望から、イデオロギーを犠牲にしてまで数合わせを実現した民主党はようやく政権をとった。しかしこれと同時に政権交代の目的は終了したことで民主党ご苦労様でしたといえる。高速道路無料化も時代に逆行した古い幼稚な夢だし、バラマかないでほしいなら、それ以外に無策だからだ。
小沢幹事長のさらなる目的は自民党の消滅だ。それが実現したら、目的だった政権交代可能な二大政党は存在しないことになる。
問題は彼らが個人的にどう考えようとの考えであるが、中国贔屓の小沢氏、岡田氏らによる旧田中派の新自由主義で、誤った日本に導いてもらっては困るということだ。利権争いにつき合わされるのはもううんざりしている。政治家に頼ることよりも、国民ができるだけ主体となって参画する社会に移行する方が合理的なことである。
方法は2つある。1つは、霞ヶ関対策として財務省と組みながら予算編成をコントロールし、徹底的に無駄な(特に隠れ肥満の)贅肉を絞ることである。もう1つは、新たな産業(筋肉)をどう見出すかである。地方と医療福祉、環境などでの市場創造が求められる。
地方が活性化する戦略とは?
地方が活性化するためには、ビジョンが必要だ。
労働人口も消費人口も縮小していくなかで、アジアとどう付き合うか、地方とアジアを結ぶための各種施策が求められている。
今回提案する内容をつないでいくと、「グローカル」という概念に行き着く。グローカルは、「グローバル+ローカル」の造語だ。今の地域活性化の議論は、国内に目線が集中しすぎており、地方の特性を活かしながら、国際的に連携するための施策に欠けている。
(1)アジアの顧客獲得のためのマーケティング戦略
まずは、アジア、特に中国、韓国、台湾からの観光客を誘致する。その意味ではKALが仁川から全国27路線でつながっていることは理にかなっている。羽田、成田、関空を経由するのは無駄である。
マーケティング戦略に従うならば、ストーリーを用意し、口コミで広まる方法、つまりはプロセスを創り上げることが求められよう。90年代後半、北海道に台湾や香港からの観光客が殺到したが、それは遡ること数年前、北海道をベースにしたドラマがヒットしたり、あるいは女流作家が書いた旅行記がベストセラーになったりしているからだ。
同じようなツールとしてはNHKのドラマなどが考えられるが、ご当地番組が少し時差(2年ぐらい後から、海外で放送される)をもってブームになるならば、それに合わせたツアーの企画をすることが肝要だ。ただ口を開けて待っていても、事態は改善されない。
次に、地元の特産品、特に高級食材を相手国(あるいは都市)に売り込むことである。しかし、売り手側が一斉に群がり、集中し、必死に商品説明をするとなると、相手はもう少し負けてもらえそうだと考える。47の都道府県がばらばらに動いても、条件闘争で相手のペースにはまってしまうだけだ。
その意味でも連邦国家的な関西州など州として取り組むことが効率がいい。フルーツやワインで実績のあるカリフォルニア州がいい例だ。なんでも県単位で総合バランスをとろうとするからインフラなどに重複する無駄が起きる。大阪だ兵庫だといっているから関空、神戸などの利害による空港建設の弊害はその例だ。欧州がそうであるように権限は集約して州政府として機能させた方が効率的だ。州では広範囲だから、補完するブロックとして府県は残した方がいい。歴史学研都市として奈良、京都、港と外国交流基地として神戸、中心機能として商都大阪といった補完である。すべてが4番打者をめざすのではなく相乗効果のチームプレーがとれてこそ強いのである。
カリフォルニア・ワインインスティテュート http://www.calwinej.com/institute/index.html
カリフォルニア観光局 http://www.visitcalifornia.jp/
(2)留学生の有効活用
少なくとも、アジアからの留学生を大々的に募集している大学がある地域では、そうした施策を打ち出しても良いのではないかと考える。
役所が模範を示すことで、民間企業もそれに続く。そうすることで、自国に戻った後でも、ビジネスをはじめとする関係が続くような国際交流の芽が生まれる。
地方自治体の上海や北京などの事務所の中には、地方議員の海外出張時の接待係と化しているところも少なくない。そうであるならば、年に一度、留学生らが帰国する際に、首長や幹部職員、地元選出議員らが同行し、国際交流の一環として現地メディアに取り上げてもらいながら、マーケティング戦略を実施するほうが地方を紹介する上でははるかに効果的であろう。
海外の商工会議所などとタイアップし、地場産業を売り込む方法もある。地場産業の技術が先端技術でなくとも、相手国には歓迎されるものであるケースも多い。技術の流出や知的財産権などには留意しつつ、ものづくりでの指導的な役割を果たし、コンサルティングやソリューションビジネスに参入することも可能である。
このとき、どの自治体が、どの国に興味があるのか、総務省や経済産業省が中心となり、政策的な調整をすることは可能であろう。姉妹都市や姉妹校提携などは、イメージが先行し、沢山の自治体が同じ国や地域に集中している。一斉に動くことによる混乱や、訴求力の低下は前掲の通りであり、気候や産業特性などにより、北海道や東北、北陸は欧州や北欧、家具など、九州はアジア、電子産業というようなマトリックスでのゾーン・ディフェンスを想定し、道州制に向けた戦略の一環として開始するのも一計だ。
道州制を意識し、周辺の自治体と広域連携する。あるいは航空路線で繋がりのある飛び地(大都市や有名観光地)で連携するような仕組みが求められよう。バリューチェーンで、自らがどのような価値を提供できるかが問われる。
(3)地方を支える働き盛りの誘致
国内に目を向けると、民主党も自民党もスローガンは、中央から地方へ。単に一極集中を是正し、地方拠点がミニ東京化しても、国全体としては旨く回っていかない。自転車の車輪に喩えられる「ハブ&スポーク」戦略では、ハブ(中心=東京)の部分が折れてしまうと、スポーク(各地方)に栄養が行き届かなくなる。これからは、そうしたリスクを回避できる戦略が求められる。
その首都機能の代替には、2つのシナリオが考えられる。
中央への一極集中を解消し、働きすぎのビジネスパーソンを強制的に休ませることが消費(物を買い、旨いものを食べ、人生を満喫する。さらに、地方への観光やレジャー、趣味の時間にあてがう、住宅や住居の快適環境へのビフォーアフターなど)を促進する。
1つは、関西圏が代替するという発想だ。大阪府の橋本知事が目指す方向であり、東京と大阪が日本の二大拠点として機能するという発想である。これには、東京の機能をそっくりそのまま、もう1つ大阪に作り、バックアップ機能とする必要がある。しかし、その場合、マンパワーも2倍いることになる。
もう1つの発想は、ICT技術を積極利用し、複数の自治体の連携(ネットワーク)による補完という考え方だ。この場合、いくつかの自治体が立候補し、政府機能の一部を代替する場となることを宣言する。地方自治体は、中国やインドが近年模索する先進国のビジネスセンター代替業としての機能獲得を目指す。単に中央政府の機能を肩代わりするだけでなく、周辺の民間企業によるサポートインダストリーが集結することで、一般企業からの遠隔での事務処理等の業務受託を通して、地域産業の活性化を図ることが可能となる(イメージ的にはコールセンター誘致の延長線上にある業務の高度化、さらなる専門化、細分化を目指す動きである)。
いずれにせよ、最初から地方が全ての責任を持つのではなく、1週間から10日ぐらいやってみて、徐々に期間を延ばしていく。最終的には、3カ月、地方で完全に機能するようにすることだ。これを10年ぐらい繰り返すことにより、徐々に中央の機能は分散化され細分化されるので、結果的に、首都機能は移転され、中長期的には、一極集中は是正されることになる。
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