産経 2009.9.29 18:18
国内最古とみられる約12万年前の旧石器時代の石器20点が、島根県出雲市多伎町の砂原遺跡で出土し29日、同遺跡学術発掘調査団(団長、松藤和人同志社大教授)が発表したというのだから考古学では大ニュース。
国内ではこれまで3万5千~4万年前の旧石器が最古とされていたが、8万年以上さかのぼることになり、日本列島に人類が存在したことを示す画期的な発見となりそうだ。
同遺跡で地質調査をしていた成瀬敏郎・兵庫教育大学名誉教授(古土壌学)が8月、日本海から約100メートル内陸に入った地層面が見える崖(がけ)で石片を発見。松藤教授が鑑定したところ人為的に加工された石片の可能性が高いことが判明し、詳細な発掘調査を実施した。
石器は、石英の一種の玉髄(ぎょくずい)製などで長さ2~5センチ程度だった。いずれも人の手で割られたとみられる鋭い断面が確認された。この石器は、ナイフのように使った可能性もあるという。
地層の分析で、石器の上40~50センチに積もった火山灰層が約11万年前、近くの三瓶山(さんべさん)が噴火して形成された「三瓶木次(きすき)火山灰層」と特定。見つかった石器は、この地層よりさらに古いことが分かった。
平成12年に発覚した旧石器捏造(ねつぞう)問題の記憶がいまなお鮮烈なだけに、研究者の衝撃は大きい。
「本当に石器なのか」という根強い疑問に対し、調査団は「さまざまな角度から検証した」と自信を深める。日本列島に人類はいつ出現したのか-。わずか数センチの石片が、謎を秘めた日本人のルーツに大きな一石を投じることになった。
調査団長の松藤和人・同志社大教授は石器の年代について「科学的に時期が分かる火山灰層が何層もあり、年代に問題はない」と強調。旧石器捏造問題では、日本考古学協会調査特別委員会の総括委員として検証しただけに、自らの調査でも地層を丹念に調べた。