古事記 上巻「神話編」3 島産みと神産み

この二神は、大八島(おおやしま)を構成する島々を生み出していった。

最初にお生みになった子は、淡路島である。

淡路国一宮  伊弉諾神宮

つぎに、伊予之二名島(四国)をお生みになった。この島は体が一つで顔が四つあり、それぞれの顔に名があった。そこで、伊予の国をエヒメ(愛比売)といい、讃岐の国をイヒヨリヒコ(飯依比古)といい、阿波の国をオオゲツヒメ(大宜都比売)といい、土佐の国をタケヨリワケ(建依別)という。

つぎに三子の隠岐の島をお生みになった。またの名はアメノオシコロワケ(天之忍許呂別)という。

つぎに筑紫島(九州)をお生みになった。この島も体が一つで顔が四つあり、それぞれの顔に名があった。
そこで筑紫の国をシラヒワケ(白日別)といい、豊国をトヨヒワケ(豊日別)といい、肥の国をタケヒムカヒトヨクジヒネワケ(建日向日豊久士比泥別)といい、熊曾の国をタケヒワケ(建日別)という。

つぎに壱岐の島をお生みになった。またの名はアメヒトツバシラ(天比登都柱)という。
つぎに対馬をお生みになった。またの名はアメノサデヨリヒメ(天之狭手依比売)という。
つぎに佐度の島をお生みになった。
つぎにオオヤマトトヨアキツ(大倭豊秋津島・本州)をお生みになった。またの名はアマツミソラトヨアキヅネワケ(天御虚空豊秋津根)という。
そこでこの八つの島を先にお生みになったので大八島国(おおやしま)という。

その後、帰られるときに吉備の児島をお生みになった。またの名はタケヒカタワケ(建日方別)という。
つぎに小豆島をお生みになった。またの名はオオノデヒメ(大野手比売)という。
つぎに大島をお生みになった。またの名はオオタマルワケ(大多麻流別)という。
つぎに女島をお生みになった。またの名はアメノヒトツネ(天一根)という。
つぎに知訶島をお生みになった。またの名はアメノオシヲ(天之忍男)という。
つぎに両児島をお生みになった。またの名はアメフタヤ(天両屋)という。

イザナキとイザナミは国を生み終えて、さらに多くの神をお生みになった。

そして生んだ神の名はオオコトオシヲ(大事忍男神)、つぎにイハツチビコ(石土毘古神)を生み、つぎにイハスヒメ(石巣比売)を生み、つぎにオオトヒワケ(大戸日別神)を生み、つぎにアメノフキヲ(天之吹男神)を生み、つぎにオオヤビコ(大屋毘古神)を生み、つぎにカザモツワケノオシヲ(風木津別之忍男神)を生み、つぎに海の神、名はオオワタツミ(大綿津見神)を生み、つぎに水戸の神、名はハヤアキツヒコ(速秋津日子神)、つぎに女神のハヤアキツヒメ(速秋津比売神)を生んだ。

このハヤアキツヒコ、ハヤアキツヒメの二柱の神が、それぞれ河と海を分担して生んだ神の名はアワナギ(沫那芸神)、つぎにアワナミ(沫那美神)、つぎにツラナギ(頬那芸神)、つぎにツラナミ(頬那美神)、つぎにアメノミクマリ(天之分水神)、つぎにクニノミクマリ(国之水分神)、つぎにアメノクヒザモチ(天之久比箸母智神)、つぎにクニノクヒザモチ(国之久比箸母智神)である。

つぎに風の神、シナツヒコ(志那都比古神)を生み、つぎに木の神、ククノチ(久久能智神)を生み、つぎに山の神、オオヤマツミ(大山津美神)を生み、つぎに野の神、カヤノヒメ(鹿屋野比売神)を生んだ。またの名はノズチ(野椎神)という。

このオオヤマツミ、ノズチの二柱の神が、それぞれ山と野を分担して生んだ神の名は、アメノサズチ(天之狭土神)、つぎにクニノサズチ(国之狭土神)、つぎにアメノサギリ(天之狭霧神)、つぎにクニノサギリ(国之狭霧神)、つぎにアメノクラト(天之闇戸神)、つぎにクニノクラト(国之闇戸神)、つぎにオオトマトヒコ(大戸或子神)、つぎにオオトマトヒメ(大戸或女神)である。

つぎに生んだ神の名はトリノイハクスフネ(鳥之石楠船神)、またの名は天鳥船という。つぎにオオゲツヒメ(大宜津比売神、または大気津比売神)を生んだ。

つぎにヒノヤギハヤヲ(火之夜芸速男神)を生んだ。またの名は火之炫毘古神(ヒノカガビコ)といい、またの名はヒノカグツチ(火之迦具土神)という。

ところが、この子を生んだことで、イザナミは女陰が焼けて病の床に臥(ふ)してしまった。

このとき嘔吐からカナヤマビコ(金山毘古神)が生まれ、つぎにカナヤマビメ(金山毘売神)が生まれた。
つぎに糞からハニヤスビコ(波邇夜須毘古神)が生まれた。つぎに尿からミツハノメ(弥都能売神)が生まれた。つぎにワクムスヒ(和久産巣日神)。この神の子はトヨウケビメ(豊宇気毘売神)という。

イザナキ、イザナミの二柱の神が共に生んだ島は全部で十四島、神は三十五柱である。
そしてイザナミは火の神を生んだことが原因でついにお亡くなりになった。

そこでイザナキは「いとしいわが妻を、ひとりの子に代えようとは思わなかった」と仰せになって、すぐにイザナミの枕元に臥し、足下に臥して泣き悲しまれた。その涙から成り出た神は、香久山の丘の、木の本におられるナキサワメ(泣沢女神)である。

そして亡くなられたイザナミを出雲国と伯伎国の境にある比婆の山に葬り申し上げた。

そしてイザナキは差していた十拳の剣とつかのつるぎを抜いて、ヒノカグツチの首をお斬りになった。
するとその剣先に付いた血が飛び散ってそこから生まれた神の名はイハサク(石拆神)、つぎにネサク(根拆神)、つぎにイハツツノヲ(石筒之男神)である。

つぎに御剣の本に付いた血が飛び散ってそこからミカハヤヒ(甕速日神)が生まれた。つぎにヒハヤヒ(樋速日神)、つぎにタケミカヅチノヲ(建御雷之男神)、またの名はタケフツ(建布都神)、またの名はトヨフツ(豊布都神)である。

つぎに御剣の柄にたまった血が、指の間から漏れ出たなかからクラオカミ(闇淤加美神)、つぎにクラミツハ(闇御津羽神)が生まれた。

以上の石拆神から闇御津羽神まであわせて八柱の神は御剣によって生まれた神である。

また殺されたカグツチの頭からマサカヤマツミ(正鹿山津美神)が生まれた。
つぎに胸からオドヤマツミ(淤縢山津見神)が生まれた。
つぎに腹からオクヤマツミ(奥山津美神)が生まれた。
つぎに陰部からクラヤマツミ(闇山津美神)が生まれた。
つぎに左の手からシギヤマツミ(志芸山津美神)が生まれた。
つぎに右の手からハヤマツミ(羽山津美神)が生まれた。
つぎに左の足からハラヤマツミ(原山津美神)が生まれた。
つぎに右の足からトヤマツミ(戸山津美神)が生まれた。

そしてイザナキがお斬りになった剣の名はアメノヲハバリ(天之尾羽張)といい、またの名はイツノヲハバリ(伊都之尾羽張)という。

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