ジャーナリズムの重要な役割は「権力のチェック」である

2010年04月08日(木) 牧野 洋
牧野 洋牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」第1回 トヨタ問題をリードしたLAタイムズの「調査報道」日本の新聞が報じないリコール騒動の真実
現代ビジネス http://gendai.ismedia.jp/articles/-/418

 トヨタ報道で圧倒的な強さを見せたのが、南カリフォルニアを本拠にする有力紙ロサンゼルス・タイムズ(LAタイムズ)。使った手法は、権力の発表をうのみにせずに独自取材で検証する「調査報道」だ。昨年8月に南カリフォルニアで起きたトヨタ車の暴走は、4人が死亡し、全国的な注目を集めた事故だけに、LAタイムズは「地元ニュース」として全力で追いかけたようだ。
 第1弾は、昨年10月18日付の記事だった。その数週間前にトヨタは事故の原因はフロアマットだとして、同社史上最大のリコール(約380万台)を発表した。これに対し、LAタイムズは独自調査を実施して1面トップ記事にしたのである。「トヨタの問題はフロアマットにとどまらない可能性がある」との見出しを掲げ、「フロアマットが原因」とするトヨタ側の説明に疑問を投げかけた。
 この記事の中でLAタイムズは、トヨタと高速道路交通安全局(NHTSA)へ報告された「トヨタ車急加速の事例」を数百件分析するとともに、専門家の意見も多数紹介。ミシガン大学の専門家の意見として「自動車メーカーはますます複雑な電子システムを導入しており、それがどのように機能しているのかうまく説明できなくなっている」と伝えている。すでに、この段階で電子制御システム問題をにおわせているのだ。
 第2弾は、同年11月8日付の1面トップ記事。ここでは「オーナーの苦情を無視する交通安全局」との見出しで、トヨタ車の急加速問題に対する当局の対応を批判した。その根拠にしたのが、トヨタ車に関連した(1)連邦政府による欠陥調査(2)NHTSAへ寄せられたオーナーの苦情(3)トヨタに対する集団訴訟(4)民間調査機関と警察による事故記録――など数千件に及ぶ資料だ。すべて公開情報である。
同記事は次のような衝撃的なデータも紹介している。

「2002年式モデルの登場後、トヨタ車をめぐっては急加速の苦情件数が1000件以上に達し、急加速を原因にした死亡者数が少なくとも19人に上る。NHTSAによれば、同じ期間に急加速を原因にした死亡者数は、トヨタを除く全自動車メーカーを合計しても11件にすぎない」

 補足しておくと、トヨタ車では2002年式モデルで電子制御システムの導入が本格化し始めている。
 この記事は、LAタイムズの独自調査に基づく「スクープ」だ。これを日本の大新聞は追っかけた。翌日9日付の夕刊で朝日新聞が「急加速し暴走、米報告1000件超レクサス巡り報道」、産経新聞が「トヨタ車急加速で19人が死亡か」、日本経済新聞が「米トヨタ車、急加速1000件、19人死亡」と報じたのに続き、10日付朝刊で読売新聞が「レクサス『暴走』報告多数」と伝えた。
いずれも独自に調査して追っかけたのではなく、LAタイムズの記事を「転電」しただけである。転電とは「LAタイムズの報道によると」などと他紙の報道を引用、紹介する記事だ。日本を代表するグローバル企業の問題でありながら、日本の大新聞がアメリカでは調査報道と無縁であったことをうかがわせる。ちなみに、日本経済新聞社は数年前にロサンゼルス支局を実質閉鎖している。
決定打になったのが同年11月29日付の第3弾だ。やはり1面トップ扱いであり、主見出しで「データが示すトヨタの急加速問題」、ワキ見出しで「トヨタはフロアマット原因説を唱えるが、電子制御システム移行後に急加速事例が急増」と伝えている。ここでもLAタイムズは数千件に上る公開情報を徹底的に分析している。
(中略)
 ジャーナリズムの重要な役割は「権力のチェック」である。大企業も政府と同じくジャーナリズムが監視すべき対象だ。報道機関は消費者や納税者の立場から「権力が何か隠していないか」といった問題意識を持ち、取材するよう期待されている。その主要手段が調査報道なのである。権力の発表をそのまま伝える「発表ジャーナリズム」は本来の姿ではない。

新聞の発行部数が減り続けている主たる原因は、若者を中心に新聞を定期購読しなくなったことだが、それは今に始まったことではないが、インターネットや携帯電話の普及で拍車をかけた。携帯の電話代に占める負担が新聞購読や出版全体を不振に導いていることは確かだ。
インターネットの普及で新聞社の記事を容易に比較読みできるようになったことで、「共同」「ロイター」などと同じ情報ソースから引用していることが一目瞭然だ。新聞・テレビの日本のマスメディアは、自社の調査報道以外には、情報ソースが通信社という同じところから得ていることだ。
しかもこれまでは通信社が大衆に向け自ら報道をしなかったが、ロイター、AP、AFP、時事通信http://www.jiji.com/などネットで独自にニュースを流すようになり、それは新聞社が報じるよりも早い。
共同通信社は「47ニュース」として産経新聞と地方紙47都道府県のニュースをWEBサイトで行う形式を取っている。http://www.47news.jp/
また、日本の新聞社とテレビ局の系列化(クロスオーナーシップ)は世界的に見れば異常で、ヨーロッパ先進国やアメリカ合衆国では「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度や法律が既に制定されている。少なくとも「権力のチェック」「政党へのポリシー」に共存共栄の原理が働くメリットが大きい。だから違いが面白いし、共和党寄りと民主党よりで購読者の棲み分けが機能している。
日本は新聞宅配制度が充実していて宅配購読率がきわめて高い。

産経新聞が中国に強いワケ
日中記者交換協定
1972年(昭和47年)の日中国交正常化により、記者交換協定は実務的な政府間協定へと移行した。
すなわち、
日本政府は中国を敵視してはならない
米国に追随して「二つの中国」をつくる陰謀を弄しない
中日両国関係が正常化の方向に発展するのを妨げない
の3点の遵守が取り決められた。

文化大革命期(1966-1976年)に共同通信社を皮きりに他紙が次々と国外追放される中、朝日新聞のみが中国国内に残り、以降、産経を除く他社は中国当局の台湾支局閉鎖の要求を呑んで中国に支局を開局した。
これとは対照的に、産経新聞は中国当局の要求を一貫して拒否し、結果として1967年に柴田穂記者が国外追放されて以降は、北京への特派員常駐を認められなかった状態で、日本の新聞で最も早く林彪の死亡推測記事を伝えるなど、むしろ政治的には中国を詳しく報道することとなった。

以後、1998年までの31年間、北京に支局を置くことがなかった。1998年に、北京に再び開局した支局を「中国総局」とし、組織上「台湾支局」をその下に配置することで中国支局を再開した。産経新聞がこうして中国の支局を再設置した結果、マスコミ他社もそれに倣って同じ条件で台湾に支局を開局することとなった(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)。
産経新聞を除き、全国紙である大手新聞社は親中であると批判されるが、案外、上記の単純な理由で配慮しているためからで、別に産経新聞には「権力のチェック」を守った姿勢に敬意を表するので、産経新聞以外の応援をするつもりもないが、案外、恣意的に親中であるわけでもなく、それは新聞社系列のテレビも同様である。

岐路に立たされているマスメディア

しかし、「権力のチェック」と「調査報道」の記者の目という基本が薄れているのであれば、ラジオ・テレビの速報性、そしてインターネットとのさらなる競合が、翌日配達される紙新聞の存在の意義を改めて問われているのだ。それはオーム返しのようなテレビのニュースも同じだ。
ポピュリズムによって小泉政権が誕生した。そして自民党離れが民主党政権を誕生させた。一時の流行によって世論が大きく揺れてしまう小選挙区制の民衆政治は危険だ。多数決が民主主義であるとする政治は衆愚政治である。一揆はいっとき民衆の不満を政府に訴えることには影響力をもたらすが、日本の未来は少数の志しのある人々によってどういう国家を建設しなければいけないかを論じなければ、新聞を楽しみに買って読む価値がないではないか。
そんなことより、日本が岐路に立たされているいま、百年の計をもって政治をおこなわないといけないのである。メディアがジャーナリズムとして重要な役割は、ポピュリズムで政治家を評価して民衆をミスリードしてはならないことだ。第四の権力として、伝達手段が変化しようともメディアが果たす役割はなくなるばかりか、グローバルスタンダドというアメリカの新たな覇権国家による主導権に、中国というデタラメなエゴ国家の間に、権力に屈せず日本のオリジナリティを発揮することが日本の貫く大義であるような気がしてならない。

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