“人口減少”こそビジネスチャンス(後編)

/ 10月 30, 2009/ オピニオン/ 1 comments

“人口減少”こそビジネスチャンス(後編)
現代社会研究所所長・青森大学社会学部教授
古田隆彦 氏
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/18/
顧客減少に対応した能力が必要
――人口減少時代に向けて、一般的には「労働力の減少」「内需の減少」「年金負担の増大」という3つの問題が指摘されます。前編の最後で労働力減少は生産性の向上によって補われるというお話でしたが、残り2つの問題はいかがでしょうか。
古田:
 もちろん人口が減るということは顧客が減るということですから、経済構造は大きく変わります。将来の宅地需要の縮小は確実となり、地価の低落が始まりました。ちなみにバブル経済崩壊の基本的要因に人口停滞があったことは疑いのない事実です。
 今後はもっと大きな影響が生じ、住宅、食料、衣料などの個人消費は減少します。そして、「基本財」――日本でいえば工業商品の価格が下がり、逆に「選択財」――すなわち非工業商品非物質的付加価値を持った商品の価格が上昇します。世界への輸出品目でも家電や自動車の売り上げは落ちていくでしょう。
 これだけを見ると、マイナス成長は当然と悲観的になるかもしれませんが、選択財を中心とした世界最先端の消費基地に日本の内需構造を転換したらどうでしょうか。江戸中期のような爛熟したな文化が花開くかもしれません。
 例えばアニメやゲームなどのオタク産業はすでに海外へ輸出されるようになっています。携帯電話をモノ産業と考えるのは間違いで、中身のソフトが重要なのです。今後、日本の消費文化の感性に合った商品やサービスを作ることができるかどうかが問題でしょう。決してマイナス面ばかりではなく、プラス面を考えれば、新たな発展が見えてきます。
 そして、GDP(国内総生産)を維持し、ゼロ成長であれば、個人所得は増えて、生活水準は上がるのです。
 後ほどお話ししますが、そのためには企業も社員も顧客減少に対応した能力を身に付けなければなりません。ひとことで言えば、顧客により高いものを買ってもらう。利用・購入回数を増やしてもらう。新規顧客を開拓する。さらに、新しいニーズを発見して、新しい商品・サービスを提供する。これを実現するためには一人ひとりの社員が創造性を持たなければいけません。そして、戦略的なマーケティングが必要となります。過去と同じものを過去と同じように売っていれば、内需が減るのは当然なのです。
定義を変えるだけで年金問題は解決
――若年層の減少と、高齢者層の増加による年金負担の問題はいかがでしょうか。
古田:
 最大の問題はいまだに65歳以上を高齢者、すなわち被扶養者と決めつけて議論していることです。この定義は平均寿命が70歳前後だった1960年頃に決められたもので、寿命が80歳を超した現在には合わないのです。現在の65~74歳は体力や気力もあり、仕事、貯蓄、資産運用などで経済力も維持しています。
 70歳が平均寿命のとき、最後の5年間の面倒を社会が見ようと高齢者を65歳としたならば、80歳が寿命の現在は75歳から高齢者とするべきでしょう。今後3年ごとに高齢者の定義を1歳ずつ上げていけば、2035年前後の75歳以上は2045万人となり、現在の65歳以上より494万人も減るのです。
 一方、子供は0~14歳と定義されていますが、これは1960年代にWHO(世界保健機構)の提案を受け入れたものです。当時は進学率が高校約60%、大学など約10%で、10代の大半が働いていました。ところが、現在では高校進学率は97%に達し、10代後半はほとんど未就労です。そこで、子供の定義を10歳繰り上げて24歳までとし、同様に今後3年ごとに1歳ずつ上げていけば、2035年には1800万人となり、現在の14歳以下より50万人も多くなります。
 政府は2005年度の少子化対策に1兆3000億円もの予算を計上しましたが、このように定義を変えるだけで、一銭もかからず、子供は増え、高齢者は減るのです。したがって年金の被扶養者は減り、扶養者が増えるわけですから、年金問題は生じません。これは「詭弁」ではなく、60年代の古い枠組みにとらわれている発想を変えるべきだということなのです。
 そのためには、もちろん60~70年代の働く場を確保する必要がある。65~75歳の「ハイパーミドル」が年金を負担しつつ、生活を保障できるチャンスを社会が提供するべきでしょう。企業だけでなく、例えば大学や高校も経験豊かな社会人を講師として採用する。行政の窓口でも、窓口業務の上手な定年退職者を活用するべきです。
 日本のこうした試みはヨーロッパや韓国・台湾などにも通用するはずです。日本がこの時代をうまく乗り切れば、そのノウハウで世界に貢献できる。国内でも少子化から回復した自治体をモデルとするのではなく、人口が減っても生活水準を上げているような自治体を探してモデルにするべきです。この4~5年は試行錯誤が続くでしょうが、日本は動き出すと早いので、21世紀は世界が日本を見本とする時代になるでしょう。
続きは、ビジネス面なので関心のある方はご覧ください。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/18/index1.html
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/18/index2.html
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1 Comment

  1. 子供や老人の定義を変えても無意味でしょう。日本という国の老化は確実に進んでいる訳ですから、モノ・サービスは売れなくなりますし、経済は右肩下がりが続きます。
    日本の主要都市の年齢別人口グラフ
    http://homepage3.nifty.com/joharinokagami/110001.html

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